7月度「ココロの1枚」
混沌と喧騒が生んだ唯一無二のカタルシス:
"Led Zeppelin II"
日本盤初出:1969年 月
発売中のCD: Atlantic AMCY-4006

ビーチ・ボーイズを反則使って10枚も通り過ぎたらいよいよ禁じ手ゾーンへと突入する「ココロの1枚」シリーズ。もう、暑いんで究極の禁じ手をいきなりやっちゃいましょう! ツェッペリンだぁ! 例のCD受け取る前からもう決まってたんだから(<約一名)
丸芽志悟と彼等の付き合いは実に古いです。FMかじりつき小学生時代を送っていた頃は、「ロック・リクエスト大会」なんかでは必ず曲が流されていたし。当時クイーン、キッス、エアロスミスというのがハード・ロックご三家(笑)とされていて、その先輩として重宝されていたのがツェッペリンでした。リッチーが脱退してその後釜に迎えられたトミー・ボーリンが事故死、暗礁に乗り上げてしまったもう一つの雄、ディープ・パープルの撃沈を横目に無敵のロック王として絶頂期を迎えていた頃発表された7作目「プレゼンス」('76)にはこんな想い出が。高熱を出して寝込んでいたある日、父親が音楽テープを買ってきてくれるというのでリクエストしたのが、当時のフォーク系のヒットを集めたポニーのオムニバス(憂歌団の「た・くわん」と夕焼け楽団の「ハイサイおじさん」に夢中になった記憶だけある。今振り返ると絵夢の「遠くへ」ってフリー・フォークだなぁ)とこのアルバム。初歩的なラジカセで聴いたそのサウンドは直球一直線で刺激いっぱいだった。その熱さに熱も吹っ飛んだかというのは覚えていないが。ヤな小学5年生だったなぁ。
その後ロック・ジャーナリズムというものを知ってしまった自分は、渋谷某氏の異常なまでのツェッペリンびいきにあきれて一時疎遠となるが、その間にドラマーのジョン・ボーナムが命を失い彼等も活動停止を余儀なくされてしまう。自分もパンクとかオルタナの方に傾いていたし。しかし高校に進んで事態が一変。スクエアでロックなんて何さと思われた(ついでに女っ気全くない)高校生活の中、クラスにエレキ・ギターを持っていた輩が辛うじて3人だけいて、その内一人がZEP狂いだったのだ。彼に「バンドやろう」とかいろいろ吹き込まれた挙句、自分も自然にツェッペリンを見直す方向に傾く。確かにその頃のHR/HMは嫌だったけど、彼からのダビング・テープ、しばらく後FM東京で「全曲放送」した際録音したエアチェック・テープで彼等の世界に改めて接して、これは単なるハード・ロックじゃない、極めて深い音楽なんだなぁと哲学的ため息をつくに至ったのである。結局バンド結成は幻となってしまったのだが。多分ジョン・ポールの役を務めさせられたことだろうなぁ。
その頃アナログ(当然!)で入手したのがこのセカンド・アルバムとラスト作「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」('79)だったのだ。当時買ってたものといえば大抵TOP40ものばっかりで、所謂「ロックの古典」を買う事はまずなかったが、これらは数少ない例外だった。後者を買ったメリットはなんだったんだろう。6種類あるジャケや「水につけると変化する中袋」がそそったのだろうか。音楽的にはかなり分裂した感じで彼等の最高傑作では絶対ないんだけど。一方このセカンドは何せ無敵のクラシック「胸いっぱいの愛を」がオープニングを飾っているし、「レモン・ソング」の歌詞には高校生時分ならいやがうえにもニヤッとさせられたものだ。(女っ気全くなかったから.....) 他のアルバムに関してはダビング・テープでしばらく持ちこたえていたが、1988年にワーナー・パイオニア(当時)から史上初の2000円という廉価盤で出た「Forever Young」シリーズのリイシューで一挙購入。ただしこのシリーズはちゃんとマスタリングされていなかったのが玉に傷。アナログ音源をそのまま移し変えただけという音質で、名曲「天国への階段」の出だしは悲惨なものだった。しかしその2年後にはジミー・ペイジが自らリマスターし直したBOXセットがリリースされ、さらにアルバム単位でもリマスターされリイシューされたのが現在出回るAMCY-4000番台シリーズなので安心である。運がよければ紙ジャケ仕様で限定リリースされたシリーズもまだ手に入るかもしれない。「III」('70)の回るジャケットとか「フィジカル・グラフィティ」('75)の穴あきジャケとかも忠実に再現されており痛快だ。水につけると変化する中袋は未確認だけど。音はリマスターの方が使用されている。
前置きが長くなってしまったが、このアルバム。いまさら詳細に説明して何になるって感じの作品であるのは確かだけど、丸芽のパースペクティヴを期待する人々のために私観を交えて語らせて頂きます。「ニュー・ヤードバーズ」の霊を跳ね飛ばしてセンセーショナルに登場したツェッペリンが、ファースト・アルバムでいきなりロック界に激震を送り込み、その激震を楽しみながらこしらえてしまった巨塔がこのセカンド・アルバムである。何せアルバム、ツアー、休みというサイクル関係なし。アルバムの爆発振りを持続しながらステージとその余波でさらに爆発。テンションを保持した状態のままスタジオ入りできる時間にスタジオに入り、その成果を凝縮したという代物である。ゆえにファーストからたったの9ヶ月後のリリース。しかし瞬発力が蓄積されてまたたく間に大ヒット、彼等のロック界に於ける地位は完全に確立されたのだった。ここにはツェッペリン・カタルシスの濃縮型がストレートな形で叩き込まれている。その極端な例がトップを飾るアンセム「胸いっぱいの愛を」。
ジミー・ペイジの直球一本勝負ギター・リフに、ロバート・プラントのパワー全開ボーカルが絡んで来る。ジョン・ボール・ジョーンズのベースがジミーの腰を強化しつつ、ジョン・ボーナムのドラムが破壊力満点で太刀かざす。スモール・フェイセズの「ユー・ニード・ラヴィン」という明白な下敷き曲があるものの、ちゃっかり以上のパワーの肥やしとするジミーのしたたかさが、バンドの狂暴性を伴なって脳と腰を刺激する一瞬。中間部での混乱状態の音の応酬と、それを打ち破るジミーのギター・ソロ。これは衝動の音像化だ。欲望とか憧れとかそんなのない。ただ絡みたい、その状態を音で著したものである。後にジャズ・ファンク・インストとかアシッド・ジャズ盤カバーも生まれ、さらに「他人の関係」の根底にまで影響を及ぼしたロック怪獣は、今なお火を吹き続ける本家の頭を越えることを許さない。
続く「強き二人の愛」は一瞬レイド・バックしたタイプの曲と感じさせるものだが、ここでもしたたかな計算が生きた展開が心地良い。終盤での極端なステレオ効果を伴なったジミーのギターがとにかく強烈である。「レモン・ソング」はこれまた古いブルースに題材を求めたもので、ラフな仕上がりはいかにも荒れたままスタジオ入りしたことを物語ってくれる。ロバートの衝動一発で決まりの表現(「絞っておくれ、俺のレモンを.....」! 純な方は聴かないほうがいいでしょう)に、変幻自在のテンポ、全てを制御するジミーのギター。まさにやりたい放題。A面ラストは穏やかにムードを収拾する名曲「サンキュー」。ちょっと前まで熱かったサイケの名残を感じさせる雰囲気がある。デュラン・デュランの過去のロック遺産に敬意を表するアルバムのタイトルにこの曲名が選ばれていた。
B面トップはまたまた今なお新鮮さを保ち続ける名曲「ハートブレーカー」。えっ、日本のグループが「ハートブレーカー」をカバーした? 一体誰の? っていう位同名異曲の多いタイトル(「ひまわり」程ではないが...)だが、このZEP版はギター・リフの強力さとロバートの熱血ぶりで一歩リードしている。何事かっていう面持ちで始まるギター・ソロには胸が高まらずにいられない。続いて「リヴィング・ラヴィング・メイド」。ポップな要素も持ちながらまたもリフ一発勝負の解りやすいロックンロール。B面ながらかなりエアプレイを稼いだ曲でもあった。次作で顕著になるアコースティックなレイド・バック路線をちょっと試したって感じの「ランブル・オン」を挟んで、ジョン・ボーナムの激爆ドラムのショーケースとなっている「モビー・ディック」へ。この曲からサンプリングしたドラムが80年代ポップ界でもてはやされたという話もありますが、しかしこの世界は独自のものである。ジミーのギター・ソロをMIDIで打ち込むのは大変ながら仕事しているものにとってはやり甲斐あるかもしれないけど、このボーナムのドラムってのは何事にも変えられないなあ。機械なんかにゃもっての他でしょ。キース・ムーンの本能直結のドラムと違って、彼のプレイはさすが経験を積んだ他メンバーのしたたかさに研磨されて、荒削りながらも計算された威力が伝わって来るってものである。隙間の埋め方なんて絶品ではないか。そして間髪入れず、ラスト・ナンバー「ブリング・イット・オン・ホーム」に雪崩込む。これもストレートにブルースの影響を受けたナンバーながら、またも強烈リフを基調に大胆な組み変えを行なって独自のZEPサウンドへと昇華されている。
ジミー・ペイジのしたたかな計算&略奪テクニックに、ジョン・ポールの確かな音楽的センス。ロバートの異常なまでの表現力にボーナムの野獣性。こんなバンドはもう現われることはないであろう。何かが欠けたらもうツェッペリンじゃないからね。ってことで、メンバーのソロ活動を追うことは全くないのだ。といって、その世界を今のバンドに求めるのも野暮なものだけどね。化石となることを許されないバンドの尖った爪跡であるこのアルバムは、故にいつまでも尖ったままだ。
じゃ、次回こそモンキーズやります。ただ覚悟できてなかっただけなので........

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