| その26 | 田中友紀子/君たちのくれた夏 |
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コロムビア/1993年7月発売/新品購入 70年代末期〜80年代中期辺りのAOR/シティ・ポップ系ヴォーカル音楽が、今ポスト・ソフトロック(?)として俄に再注目を浴びているが、80年代末期を過ぎるとすーっとエアポケットに入ってしまうのは何故だろう。音楽の制作プロセス自体が無機質になってしまって、それ以前の音のような暖かみを欠いてしまったせいか、それともただ単にマーケティングの貧弱さが聴き手にトラウマをもたらしたせいであろうか? 確かに、ガールポップといわれればそれで済んでしまうもんなぁ。 この田中友紀子は、93年にデビューしコロムビアに合計3枚のアルバムを残しているヴォーカリスト。この位の存在になると、ネット情報もある程度充実してるんではないかと思って調べたら、案の定殆どが中古レコード店のサイト、もしくは参加ミュージシャンのデータベース。やっぱりなぁ、仕方ないんですな。でも、当時しっかりアルバム3枚とも新品で買っているし。あれだけ歌謡曲歌謡曲と騒いでいたくせして。やっぱりひっかかりがあったんだろうな。 当時のコロムビアの立ち位置というのもいまいち微妙で、あのピチカート・ファイヴが在籍していたものの、ポップ系に関してはとにかくB級という印象が未だにあるが、このアルバムから流れてくる音も、まずヴォーカル的には所謂主流を丁寧に継承したという感じ。いい声だけど手堅いし、しかもその響きをあまり活かせていないプロダクションがあまりにも悲しい。折角打ち込みを排除したアレンジで統一されているというのに、その捉え方がうまく行っていない。CD量産時代のまっただ中で、音質的ディテールが重要視されていなかった頃だしなぁ(当時のリイシューCDを聴いても、コロムビアとキングのものはあまりにも音がひ弱に感じる)。でも曲そのものはいいよね。全曲の作曲と編曲を、和物AORの重要キーマンである村田和人が手がけているというのはやはり大きい。AORの王道と言ってもおかしくない曲が並んでいる。ちゃんとプロデュース出来ていれば、ちょっとだけでも化けられたかもしれないよね。 もう一つ、最大のひっかかりとして挙げられるのは、未だにあのギターのテーマ曲を聴くと熱い血が騒がずにいられなくなる、テレ東の美味しい海外紀行番組「ときめきマリン」のタイアップソングがいくつか収録されていることですね。彼女自身も時々画面に登場してくれたような記憶がある(但しリポーターとしてではなく)。7曲30分、確か誰かのアルバムの残りを埋める為にカセットに入れたら丁度よくてそれで聴きまくってたような覚えが。そうだな、カセットで聴くとちょうど心地よい音質というのもありかもしれないよな。 (初出: 2005年4月4日) |
| その27 | 冨永みーな/a-ha! I'm 20 |
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ビクター/1986年7月発売/廃盤セールにて購入 声優シリーズ第2弾。ワカメちゃんの声もリフレッシュされたということで、現在サザエさん一家の声優陣の中では2番目に若いカツオ役のみ〜なさんのセカンド・アルバムを引き抜いてきました。この人の存在を知ったのは、80年代の始め位にTVで「エクソシスト」が放映された時、リンダ・ブレア演じる主役の少女の声をアテていて、妙に名前が印象に残ったのですが、このアルバムのタイトルから逆算すると10代前半だったわけで、なるほど腰の据わった声優キャリアを積んでいるんだなと思わせます。だからこそ、物真似の番組でも強力なアピールを見せつけることができるわけだし、それ故にカツオ役をスムーズに引き継ぐことが出来たんだしょうな(ちなみにそれ以前はうきえさん役)。14歳でジャイアン役を勝ち取った新人の子にも是非頑張ってほしいと思わずにいられなくなりますよ。 さてと、女性の声優が一番個性を発揮する場があだち充系の青春ドラマのヒロインだった80年代中期あたりから、声優が歌うアルバムってのがちょこちょこと出始めるわけですが(男性の声優の占める割合が今に比べて大きいのは特筆すべき)、みーなさんもその例に早速乗っ取ったというわけですな。大胆にも年齢がタイトルになってるということで、今の声優シーンを考えるとこれはかなりの挑戦ではないか(ゆえに「黒歴史」か?)。ただ20歳にしてもう堂々としたその心意気は、アルバムの随所に感じ取ることができます。86年作品故、初歩的かつ工夫のない打ち込みとサンプリング中心の音はさすがにトホホ(しかも初期のCDマスタリング特有のひ弱な音で全体的に潰れたサウンドという印象)だけど、洋楽ポップスのおいしい所をどう消化しているかが伺えて興味深い。それらを手がけるスタッフとして、その後スピッツで大躍進する笹路正徳が4曲でアレンジを手がけている辺りは見過ごせないが、個人的にはタイトル曲以下2曲の作曲・編曲を手がけている紅林やよいの方が気になるなぁ。もちろん歌の方はフレッシュかつ器用に、声優の基本に乗っ取ったもので、普通のアイドル・ポップスの延長線上のものとして安心して聴ける。3曲目なんかかなり力入った歌唱で上出来。全編英語詞の9曲目は逆に萌え声のルーツっぽい感じで歌っていて面白い。今の声優ものは、もう完全に隔離された世界の産物だもんなぁ。全く別の萌え方が確立されちゃってるもんな。 (初出: 2005年4月6日) |
| その28 | 奥山友美/ナチュラリー |
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インディヴィジュアル/1993年7月発売/新品購入 北海道出身の女子高生ガールポップ・シンガーとして注目された奥山友美。その後一時活動停止していたが、近年になって「世界がもし100人の村だったら」(セカチューのせいで忘れられたな、ある意味)のイメージ・ソングを歌うなど、地道に活動を再開しており頼もしい。まだまだ伸びそうな気配がするので、90年代の頭にインディヴィジュアル・レーベルから出した2枚のアルバムがお宝と化してしまう可能性はまだまだある。 さてこのインディヴィジュアル、出てきた時はまた新しいインディーズ・レーベルなのかと思わせたが、よくよく見るとソニーの強力な後ろ盾があって、最も初期のメジャーによる俄インディーズ戦略の例をかいま見る事が出来る。そしてまた、U局との提携といういかにもな武器をプロモーションに活かしていたことも特筆すべき。テクノ・ヴィジュアルというイメージを持つsheenもこのレーベルから出したCDのプロモーションで、テレビ埼玉の番組「SSC」に頻繁に出演していた。後にエピックからメジャー・デビューしたmiyukiやこの奥山友美がその後に続き、「SSC」を有効なプロモーションの道具として活用していたのである。この数年後発足したポルスプエストでは、「渋谷系」のイメージ形成に助けられ、やっとCDショップの棚で大々的にアピールできるレーベル戦略方法論が確立されたといえる。そしてネットも絡んでの雑多なレーベル戦略時代へと突入...... それはさておき、前年にリリースしたファースト・アルバム『STILL』ではまだ若さ故の固さが抜けなかった印象の彼女のヴォーカルも、この2枚目ではある程度フットワークも軽く手慣れたものに。青臭くなくかつ初々しい歌声に、要所要所を固める生楽器の心地良い響き。ここまで生身の演奏家の名前を多数クレジットしたアルバムに出逢うことも最近は稀になってしまったなぁ。5曲目の間奏で軽やかに舞う乙女3名のフルートと、後ろで支えるブラスとストリングス等、さりげないゴージャスさが生きている。後にエイベックスからシンガー・ソングライターとしてデビューする上田真理(まり)や、同じく創美企画〜ポニーキャニオンで歌手活動していた大本友子が作曲家として曲提供。特に2曲目「ノンフィクションは甘くない」は好きでよく聴いたなぁ。カルトな歌謡曲を聴きすぎてある意味ヘヴィなムードに陥ってた我が耳にとっては一種の清涼剤だったのかも。 (初出: 2005年4月8日) |
| その29 | 福島祐子/時の記憶 |
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ヴァージン・ジャパン/1991年10月発売/中古購入 「早すぎた名盤」の類いに数えられるべき逸品。つーか、リアルタイムでこれをお買い上げになっていたら、当然「棚の奥」になんて行ってなかっただろう(同時期の作品、青木愛『何処へゆくの』、赤池晴子『当世ロマン歌集』などは、リアタイ買いのお陰でずーっとお気に入り棚の前面に入れられている代表例)。結構触角をオールラウンドに回転させていると自負している割に、発売当時にこの作品が引っかかった記憶って全然ないのだ。レコード会社での仕事に丁度慣れてきてた頃だったので、他の会社がどんなそそることやってるかまで気が回らなかったのかもしれない。一番熱心に聴いていたのはサンディ・ラムを筆頭とする香港のポップだったし、国内のガールものはというと、そうだ、谷村有美の『愛は元気です』とかその辺の時期だったもんなぁ(爆)。 で、発売後12年経ってから、中古CD店の片隅でこれを発見。曲名の醸し出す特異なムードと、色っぽいジャケ写のコントラストにまずやられる。ネット検索してみると、このアルバムの魔力から抜けられない人達が他にもいるようだ。そしてその後の彼女はというと、ドラマ、CMからアニメ、ゲームと、幅広い分野で作曲家として活躍し続けている頼もしい存在になっている。系統としては城之内ミサ、菅野よう子、大島ミチルの線上に属する才女と見ていいだろうか。しかしこういう人達に限って、自分が歌までも披露している作品を黒歴史にしたがる傾向があるしなぁ(ちなみに私は加羽沢美濃さんもこの仲間に入れるべきと力説しているのだが、如何せんレコード会社のJ-クラシック戦略にはめられたのが悲劇だった。近作でやっと本来の姿を出し始めているのは嬉しいが、何せ旦那さんが指揮者だしなぁ......ちなみに彼女のヴォーカルは2度程ライヴで聴いたことがあるが素敵です)。全曲自らによる作詞・作曲・編曲。ミュージシャン・クレジットには他の人の名前しか載せられていないが、演奏の重要な部分もかなり手かげているに違いない。所謂ニューエイジ・ミュージックにヴォーカルを乗せたという感じの曲では、歌も癒し系音響の一つとして機能しているに過ぎず、滑らかに耳に入って行くのだが、その隙間を埋めるように配されたアグレッシヴなサウンドの曲でこそ、彼女の大胆不敵さが爆発している。全体的なコンセプトが何となく山口美央子の名盤『月姫』に通じる所があると思ってチェックしたら、コンセプト・メイカーとして同じ方が関わっているではないか! 元ルビーズの立川直樹氏がその人。ノイジーなギターやエフェクトの入れ方など、細かい所へのこだわりがフロイド好きの立川氏の影響を感じさせてニヤリとする。 8曲目の「雪」がとてつもない美しさを持つ曲で、こういうのは最近聴く事がなくなったなぁとついつい音の海に溺れてしまうのである。いや、最近の女性シンガーのアルバムでは8曲目が突出して素晴らしいというのがいくつかあるが...... なおヴァージン・ジャパンはこのアルバムを出した直後、親会社・英国ヴァージンのEMI傘下入りに乗じて業務停止、邦楽部門がフジサンケイグループ傘下に残り、メディアレモラスに発展している(後に解散、原盤権はポニーキャニオンが持っている....またポニキャンかよぅ!)。 (初出: 2005年4月10日) |
| その30 | ポカポカ! よいこクラブ |
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Pokapoka! Music Entertainment/1998年3月発売/中古購入 それは2001年1月の年度初買いのこと。お茶の水のディスクユニオンの激安コーナーに、ふと目を引くCDが一枚。他愛無いが可愛いイラストのジャケ、しかし曲目等が記されていず、全く訳が分からなかったけど、100円だったし、おまけみたいなものだと思って購入。周りにいい仲間(あくまでも当時の話、ですよ)がいるとついつい調子に乗ってしまいがちなもんでして。 その事を日記に書いて約40日後、ある方から不意にメールを頂く。「ありがとうございます」と。開封すると同時に赤面.....メールをくれたその方こそ、その100円CDの主役、ポカポカ! よいこクラブの元メンバーの方であった。聴いて下さっただけでも嬉しいとのそのお言葉に、正しい音楽家気質を見た思いがして、硬直した心が次第にポカポカと陽気を浴びてほぐされていったのである。雑食消費生活には、こういう出来事もつきまとうのですよ。元メンバーの方、再び見つけて下さったらまたよろしくお願いします。 というわけで、女性ヴォーカル+男性3名より成るバンドのピュアな自主制作盤。恐らくライヴ会場位でしか売られなかったと思われるが、一応プレスCDであるし(原則的にこのコーナーではCD-Rを取り上げる事はしないつもり)、ブックレットもしっかり作られている。90年代のこの手のバンドにしては珍しくピュアなポップ好き者精神がさりげなく生きている人達。ヴォーカリストの声質もナチュラルだし、そこに色々なヴァリエーションを加えてそれぞれの曲のカラーを演出している。同時代音楽(当時ならマイラバあたりか?)からちょっとずれた部分への憧憬を感じさせつつも、所々に鋭角的感触を加えて現代対応型グルーヴへと消化されたサウンド。このCDでの響きは意識的にライヴ感が薄められているという気がするので、ライヴを観たらもっと楽しめただろうと思う。 (初出: 2005年4月13日) |