棚の奥Revisited (5/7)

ルル網ネタ館の根底から掘り起こした、知られざるJ-pop名盤に光を当てます。

その21谷理佐/素敵を探す
ムーン (イーストウェスト)/1994年4月発売/新品購入
昨日の町田ブックオフ探索で改めて悟ったのは、「あっこれ考えてみたら自分の棚の奥にもある」ってな商品幾つかとの邂逅により、このシリーズはまだまだ終るわけにはいかないなということだ。今まで取り上げた作品も結構売られていたし、アンノウン探索派の皆さんにとってはきっととんでもないパラダイスなのでは。
今回取り上げる谷理佐のアルバムもそんな一枚で、実は新品で買っていたのだった。その当時は主流ガールポップ以上に実力至上主義だった昭和40年代歌謡にどっぷりはまっていた影響か、あまりしっくりこなかったという感じで、そのまま棚の奥に追いやられたようなものだ。ソロ歌手としてはこのアルバム一枚で終った谷理佐は、この後敢えて言うならば「仏流」のエキスパートとしてめきめきと頭角を現す。文献の訳とか旅行ガイドとか、フレンチに関するあらゆる場面でこの人の名前を目にするようになったし(「アナザー・サイド・セブンティーズ」というコンピではあの「あまい囁き」を現代感覚溢れる訳詞に仕立てていたりする)、その一方であのSonokoさんと密かにユニットを組んだりと、道楽としての音楽活動は続けていらっしゃるようなのだ。
このファースト・アルバムで早くもフレンチ趣味全開かと言えばそうでもないが、何も知らされずに聴いたら安田成美のサード・アルバムかと思ってしまうアンニュイな歌声のそこここに、彼女の嗜好がくっきり浮かび上がっている。考えてみれば、94年という時代はまだ渋谷系隆盛にまで至っていなかったし、そのバックボーンを形成するものとしてのソフトロックやボサノヴァやフレンチの再発見なんてまだまだ先の事だったはず。よって、並のガールポップというフレームに当てはめると、幾分稚拙な感じが目立つのは仕方ないのだが、その分決して色あせない不朽の魅力を手に入れたことも確かであろう。作家陣には高浪敬太郎、鴨宮涼という元ピチカート組二人とか、大石恵の作品でいい仕事をしている長谷川智樹(「みんなのうた」で流され、伝説の一曲となったという「水鳥」の作曲を担当)も名を連ねており、なるほどねぇと納得。歌詞の方は全て彼女自身が手がけている。途中、フランス語で歌い出す部分はやはりほんまもんという雰囲気。かえって90年代前半には稀だった乙女の心意気を感じられるという、不思議に愛しい一枚である。
(初出: 2005年3月21日)

その22秋本祐希/Holidays
M's Place (東芝)/1998年12月発売/新品購入
このところ新企画の参考とするために、この辺のCDのおさらいをしたくてしょうがない状態になっている。この辺って、アイドルとも女優とも微妙にスタンスが違う、まぁ敢えて言うならプロトセレブ系とでも呼びたいタイプの女性ヴォーカル。今でこそセレブという言い方は日常会話の一部と化しているし、それにカリスマが付けばある意味無敵なのだが、音楽を作る側にとってはかえってそういうラベリングって邪魔者にしか過ぎないのだろう。みんな元来は一個の天然な女性なんだからね。
この秋本祐希は、言うまでもなく95年のCX「ヴィジュアルクイーン・オブ・ザ・イヤー」出身(同期に榎本加奈子、華原朋美ら。先輩に稲森いずみ、田中広子ら)アイドルの登竜門のような形でビデオ・デビューしたが、その後はグラビア系の露出は控えつつ、ドラマを中心に活躍(一般的には例のテーマ曲でネタ化され、私にとっては原沙知絵の存在感を決定づけた一編である、あの「ビーチボーイズ」など)する傍ら、97年10月にシングル「あしたのジョーネツ」で歌手デビュー。翌年、このアルバムをリリースとほぼ同時に、西武ライオンズの大友外野手(現・中日ドラゴンズ)の奥様の座に納まった。当時は複雑な気分でありつつも、このアルバムは喜んで買い求めたが、当時のルル網で語った形跡はない。ベイスターズ優勝直後だけあって野球のことを頻繁に書きまくっていた当時の「たわごと」(現在廃web)にも、彼女の結婚に関する小言だけはやたら目立っているし。やはり幻滅するしかなかった、当時はそんなものだった。この気分から一時的に回避されるのは約2年後の事であるが。
さて、野球選手の奥さん(専業・兼業ひっくるめて)に限って言えば、そんな派手なセレブってイメージを抱かないのだが。清水香織にしろ秋本理央にしろ大東めぐみにしろ、歌手やタレント出身の人に絞ると皆堅実な人という印象だし。アナウンサー出身となると話は違ってくるのだが。この秋本祐希にしても、モデルとしての活動を続けているにせよ、出方が決して派手でないところがやっぱりという感じである。その自然体な感じは、この歌手活動唯一のアルバムにも現れている。風格の漂う写真は言うまでもなく、一つのタレントではない、女性としてのアイデンティティをしっかり表わしつつも、全体を包むカラーは天然な緑。全ヴォーカルを彼女自身が担当しているところも好感が持てる。先のシングル曲は大江千里の作品で、タイトルの持つくすぐりに魅せられつつ当時はほんとよく聴いたなという印象。初々しさは未だに耳に心地よい。続くシングルとなった「SWEET HOLIDAYS」は、歌手の力量を試すのが定例となっている広瀬香美作品に決して負けていない身のこなし。アルバムが出るまで相当時間が経ったのは、その間にレコード会社が変ったという事情もあったと思うが、その間に遂げた成長の跡が、わずか6曲の中にしっかりと刻まれているではないか。もったいない、ではなく、一つの新しい出発に乾杯と言わねばならぬ一枚。
(初出: 2005年3月23日)

その23myu/Six Rain Tales
G Wave Factory/2002年6月発売/中古購入
インディーズからリリースされている得体の知れないCDを中古で安く見つけた時、大抵はそのCDにどのような物語が潜んでいるか全く解らないものである。誰がどういう動機で買って、どういう動機で手放したかはさておき、思い切って購入して封を切って(もっとも中古の場合は既に切られているわけだが....)中身を確認して、それが良かったら大当たり。幸いここ数年の内にリリースされたものの場合は、発売元やアーティスト本人によるweb情報が充実しているから、補助情報も掴み易いし、おかげでアーティストとの距離感も縮まって二度美味しいというわけだ(北田さんTHX!)。ましてやネット隆盛以前の産物であればなお大変。一度、あるバンドのCDを100円で買ったとだけweb記事に載せたら、間もなくしてその元メンバーから感謝のメールを頂き、慌てたこともある。100円ってだけでこちらは罪の意識を感じるけど、アーティストにとってはどんな形でも聴いてもらえるなら嬉しいと、そうでなければ。勝手にMP3が行き来するのとは話が違うんだしね。PPYCさん、いつかここで取り上げさせて頂きますよ!
で、このmyuというアーティスト。よく似た名前のシンガーも何人かいるし、何気なく手にとった(発売の僅か2ヶ月後!)ときはまた新進女性歌手がひっそりデビューしたか、としか思わなかったが。しかしその正体はというと、85年にキングからシンガー・ソングライターとしてデビューした「美雪」さんだったのである! 音を聴いてから知ってびっくりした。ある意味ニューミュージックの残骸が付け入る隙もなかったあの時期において、アルバムを2枚リリースしたあと、バンドのシンガーとして再デビューしたり、「ときメモ」に曲を提供するなどの活動を経て、心機一転再々デビューとなったのがこのアルバム。確かに駆け出しの歌手という感じはしない、堂々とした歌いっぷりであるが、その一方でフレッシュなたたずまいを見せているのも見逃せない。どことなくアンニュイっぽい感じがあったキング時代とはかなり趣が違う。全曲が雨をテーマとしたコンセプト・アルバムで、全て自作曲。やたら詳細にクレジットされている楽器陣の中では、彼女自身がプレイしているヴァイオリンがひときわ耳を引く。
昨年暮れに見たよしだよしこさんのライヴでも感じたが、歌に対して頑固たる信念を持ち続ける女性は強いんだなと感じさせる確かな証拠がこの>アルバムにも宿っている。残念ながら2003年で止まっているようだが、公式サイトはこちらに生きています。
(初出: 2005年3月25日)

その24おーまきちまき/収穫
パンドラ/1998年2月発売/中古購入
「棚の奥」とか言っておいて、後々そこで取り上げたミュージシャンが今も現役でバリバリ活動しているのを知ると、ああどうしようと丸くなりつつ棚の前の方に引き出したくなってしまうのですが。確かにそそる新譜の数が限られてしまってる今であれば(経済的にも.....)、棚の前の方を活性化させるいいチャンスなのかもしれません。「コントロール」というキーワードにより前へと誘われたアチャコ一座、使えるネタとして導かれたみちや北田朋子や四方由宇、そして今日の主役のおーまきちまき。
この人の存在を知ったのは、あるきっかけでファースト・アルバム「はだしのこころがおどりだしたよ」(96年)を掴んだ時でした。主に神戸を中心とした関西地方でライヴ活動をしてらっしゃるとのことで、あまり突っかかりがなかったのですが、音を聴くと直球ど真ん中でした。その後、アルバム2枚とシングル1枚を発表しつつ、地道にライヴ活動を続けてらっしゃいます.....ということを公式サイトを見て初めて知りました。ついでに解ったのが自分と同い年であるということと、自分が空虚時代とてもお世話になったM子さんと大学時代同窓だったということで、何か親近感が。
これは98年リリースされたセカンド・アルバムで、やはり関西某所で中古品を発見して買ったもの。こうしてしょっちゅうライヴをチェックできない地方に住んでる者にとっては、有り難いきっかけとしか言い様がないのですが、本人様はきっと複雑なんでしような。前半はライヴ録音で、自身のアコーディオン及びサポートのギターをバックに歌われる心暖まる歌世界。自身が勤務している有機野菜のお店のテーマソングなども歌われていて、ほんと憎めません。歌自体にオーガニックなパワーが潜んでいます。後半はスタジオ録音で、サイケなサウンド展開の「青い空に白い月」、スケール大きな「うみになれ」など、よりヴァラエティに富んだ曲調をこなしています。地元のコミュニティFMのテーマ曲となった「アジアの風」は小室等の書き下ろし作品。全18曲で63分という大サービス振りは、地道なインディ・ヴォーカリストとしては異例のもので、その辺も徒者ではないです。もっともっと知りたい存在。きっとミュージシャンズ・ミュージシャンとして語り継がれそうな人。
(初出: 2005年3月27日)

その25大野まりな/またせて、ごめんネ。
バンダイミュージック/1999年8月発売/中古(わけあり)購入
ついにこのコーナーに究極の禁じ手、声優のアルバム登場! ある程度リスキーですが堂々とやるよ! と言ってもやはり「きっかけ」はあるものでして。そもそもある時期に某兄さんの影響からか、所謂電波ソングに猛烈にはまっていて、その流れでこの人を知ったのですが、たまたま大阪の某中古レコード店でこれを見つけて。バンダイミュージックと言えば、色々と波紋を呼びつつも99年に突如活動を中止してしまったレコード会社(ロードランナーやメガフォースなど、大手のインディのディストリビューションを手がけてもいた。それらの業務は後にビクターやユニバーサルが引き継いだり、新設されたスリーディーシステムに移行されたりしたが、レコード会社としてのバンダイの遺産に関しては、どういう形で継承されているか全く解らず。そもそもは渡辺プロがバックについたアポロンから業務引き継ぎという形でスタートした会社なのであるが....)であり、その99年のリリース作品といえばとんでもなく稀少だと即読めてしまったのである。ちなみに中古でのわけあり盤売買はまじ違法ですんで触れたくないんですけどね.......念のため、3桁価格でしたが。
で、話を戻すと、このまりな嬢、最近の活動の一つとして、あの「リカちゃん電話」の二代目リカちゃんの「中の人」を務めていた(はてなの定義によるとどうやら「黒歴史」入りしているらしい....よく考えれば、ネ。)というのをある所で知ったのが、その「きっかけ」。リカちゃんと言えば、現在私もクロニクル班の一人として大プッシュ中のコンピ「愛しのキャラうた伝説」に、その黎明期に発表されたレア曲が2曲入っていて、そこでの「中の人」が、言うまでもなく私が世界一好きな女性歌手の一人、涼川真里(現・小林由紀子)様であるというわけで余計深入りしているのであるが。一方、資料によるとまりな嬢の前に長らくリカちゃん電話の中の人を務めていたのが大御所・杉山加寿子さんであるというのは言うまでもなく、涼川さんの「中の人」時代というのは試運転期だったのだろうか(どうやら電話だけでなく、デパートなどの営業の際にも中の人として活躍していたという話もある)、はたまた東宝レコード(71年)やキング(74年)から香山リカ名義で出されたレコードの声はこの3人のどれとも違うのが明らかだしうーん混乱してきた(タイムマシンで69年に向けて出発寸前のオースティン風に)というわけで、ふとこの幻のアルバムを引っぱり出したくなってしまったのでありまーす。
99年8月(「LOVEマシーン」発売19日前!)のアルバムということでそんなに秋葉秋葉したサウンドではなく、正統派>アイドル・ポップスっぽい曲調と歌声が続く。特定のアニメとも関係ないようだし、と思ってたら5曲目の「Marinaの夏」がヤバい。タイトルは80年代アイドル・ポップへのオマージュとしても、萌え路線への導火線はこの一曲の中に既に明確な形で仕掛けられている。BPMを16程速くし、歌声をよりそっち側にエスカレートさせたらまじ王道です。俄ヲタッキーなコーラスが入っているところも確信犯だな。しかも本人作詞だぁ。しかしラストはバラードでしっかり締める。隠しメッセージも、内容的には真っ当なものであるが、撃沈寸前のバンダイさんが一番可哀想と読めてたのかな。
LOVEマ以降浮上してくる新たな形の萌え文化に乗っ取って、作り手の確信犯度がエスカレートし始める21世紀前夜の貴重な記録として重宝したい一枚。昨年リリースしたセカンド・アルバムは当然秋葉系路線突っ走りまくりの「まりなりなぁ!」。爽快です。
(初出: 2005年3月31日)

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