| introduction | まずは前口上で勝負! |
|
しかし何故丸芽志悟は物質の保管場所やら購入資金のことで必要以上に悩むのか不思議がる人もいるだろう(まさか!?!?)。それならとっとと不要物質をユニオンなりレコミンツなりに持ってって空間面・経済面ともにすっきりしろよと言う方もいるに違いない。だがそれができないのだよ。くそだからとか飽きたからとか無理して訣別の口実を作れるほどデリケートじゃないんだよ自分は。好き者同志で物々交換はすることあるけど、その場合はお互いの心の内も知れているし。 確かにうちのCD棚の奥には何にも変えられないネタが沢山ある。それらは所謂「わけあり盤」と呼ばれる、根本的に仕事環境上支給してもらったパッケージ・アイテム(よってこれらは「商品」ではなく、当然一般市場での売買はできない物質であるが、実は.....後日に続く)だったり、マーケティングの成り行きからプロパーではない市場に流れ、それらがリーズナブルな価格で売られていたので、さほど思い入れがないものにも関わらず買ってしまったものだったり。所謂「我が心の名盤」と別の所に位置するこれらのネタだって、当然供養される義務があるのだ。そう悟ったのもiPod効果なのかもしれない。滅び行くパッケージ・メディアに今こそ光を。 というわけで明日より新シリーズ「棚の奥Revisited」を開始致します。毎週水・金・日曜日に更新(但しネタを買った日やライヴを見た日は順延)するので、年内完結するとして140枚位のアイテムについて語れると思います(もちろんこれでも棚の奥アイテムの全部とは限らない)。但し邦楽の80年代末期〜00年代初頭発売のアルバムに限定させていただきます。何とかおつき合い頂ければ幸いです。(注: 結局計35回で完結となりました) (初出: 2005年2月1日) |
| その1 | 佐藤ひろこ/17 (じゅうなな) |
|
ノッカーズ (ソニー)/1999年12月発売/新品購入 我がCD棚の奥の部分で眠っているCDに何らかの価値を見い出そうとする新シリーズのしょっぱなに選んだのは、恐らく今後も同じような機会で語られた末再浮上する可能性も大きいこの一枚。 実はこのアルバム、発売当時にちゃんと新品で買ってるのです(恐らく今後語られるだろうアルバムの殆どは、この例にあてはまらない)。その時に書いたディスクレビューを要約の上コピペして再現してみます。 この17歳の女のコ、佐藤ひろこには去年(99年)7月、池袋のP'パルコ下のゲーセンから西口の歓楽街へと繋がるガード下の舗道「ウイロード」で出遭った。丁度ゆずがブレイクしてる頃で、ストリート・シンガー達は我のスキルをここぞとばかりに競いあってたものだが、そんな中何の苦悩をも顔に出さず歌っている彼女には非常に好感を抱いた。17歳のありのままの状態をパックした5曲、1200円もまた好意的。等身大の何々なんて今さら持ち出すのも恥ずかしいフレーズなんて関係ない、今時失われた若い娘の持つイノセンスを、あえてギター一本で弾き語りという最もダイレクトに伝わって来るスタイルで歌い綴る。そこには何の迷いもない、ただ歌ってて楽しいという彼女の本心だけが記録されている。こういう歌は絶対必要なんだ、若さとは何かを怒りを込めて振り返るとき。固めた拳をそっと、開いてくれる佐藤ひろこ。 この後登場する川嶋あいの影響の下、ストリートで歌ってる女の子の人口も増え、その殆どがステロタイプな価値観を無闇に放射して町並の屑に等しい存在にしかなっていない今となっては、この種の音楽を愛しいと思うこともあまりなくなったのだが、当時は当時で新鮮だったのだろう。5年を経た今聴いてみると、改めてその息吹きのリアルさに感嘆してしまう。こんなまっすぐな17才が益々「稀」となる比率を高めるに違いない故。 このレーベルは、ソニーがオーディションで見い出した「原石」を研かれる前の状態で敢えて世に送ろうという目的の元で開始されたものだが、結局一般認知度はそんなに高まらず、辛うじてZONEの所謂メジャー・デビュー前の一枚と言われるミニ・アルバムがカタログに生き残っているのみ。ただ個人的にはもう一組印象に残ったバンドもあるし、掘ってみたらなかなか面白いのではないかと思わせる。そしてこの佐藤ひろこも、全く別のきっかけ(「Deep Love」の主題歌に起用されている)で脚光を浴び、現在再浮上の真只中にいるのだ。果たしてこの一枚が貴重な出発点となるか、それとも黒歴史となるか? (初出: 2005年2月2日) |
| その2 | 浜崎章子/デイ・バイ・デイ・イズ・ゲッティング・ベター 〜今日よりも明日は〜 |
|
ビクター/1995年6月発売/わけあり盤(支給) 1995年〜96年といえば、ガールポップ好きにとっては「暗黒期の幕開け」。主流を成していた歌手の皆さんが煮え切らない人気に逆行するように内省的な作品を連発してファンを引かせはじめ、その隙間に台頭しつつあったエイベックス系やその傍流が入り込んで「主流」を乗っ取る勢い。私はそんな状況に怯えつつも面白いインディ勢に活路を見い出していたわけだが、メジャーの方でも新人の登場はむしろ乱発気味だった。ただGSで言えば69年に近い、どちらかというと中身が成り立たないビジネスが続いていたという印象で、結局は本来のピュア派の絶滅を助長するだけだったと言える。 この浜崎章子という人はそんな時期にひっそりとアルバム1枚残してシーンから消えていったシンガーである。トータル・プロデュースと数曲の作詞は秋元康。アイドル・ビジネスのカルト化を推進した秋元氏が敢えて飾らない言葉でロックをやったらどう出るか。結果的にはそこまで大きな効果を発揮せず、よくある尾崎ベースの青春疾走ロックのガールポップ版の典型に止まったという印象である。サウンド面のプロデュースが西本明だから仕方ないといえば仕方ないか。ただ、作曲と大半の作詞を手掛ける彼女のソングライティングの力量はなかなかのものを持っていると思う。 で、ここまでならただの無名アルバムで終る、のであるが。ここからが急展開だ。この人は実はあの90年の大ヒット曲「一円玉の旅がらす」で知られる、あの晴山さおりの成れの果てであることはいまいち知られていない。 確かに新人演歌歌手として彼女がプッシュされたのには違和感があった。デビュー以前はロック・バンドを組んでいたとのことだし、あくまでも自嘲的企画商品でありながら「一円玉の旅がらす」をロック・アレンジしたヴァージョンで、そのロック歌手としての片鱗を覗かせる場面もあった。更にあまり知られていないその後のシングルのカップリング曲には、自作によるなかなかの出来のポップ・ナンバーを秘かに入れていたりもしたのである。 そして、レコード会社移籍という奥の手は使わなかったものの、過去を捨てきって一からやり直したこのアルバム。あくまでも自然体の彼女を受け止められるこのアルバムは、素直に歓迎してあげねばならないものである。今はどこでどうしているかわからないけど(検索したら2000年位まではこの名義でライヴ活動していたようだ)、ナツメロ番組で作り笑いなんかしてほしくないと思う。 (初出: 2005年2月4日) |
| その3 | みち/瞳を閉じて |
|
ポリドール [自主制作]/1992年発売/中古購入 アーティストの価値が未知数なため、ブックオフみたいな店では適当に激安コーナーに入れられ、それが拾われるというケースも我が「棚の奥」の基本。常時一軍とはいかないまでも、たまに引っぱり出して聴きたくなる愛しい作品も少なくない。この「みち」という人のアルバムもそんな一枚。何せ1992年の作品故、インターネット上の情報なんて皆無に等しいのであるが、商品に記された少ない情報から妄想が膨らむ。辛うじてこの場合はTHANKS欄に記されたMANDA-LA2の名前位しかひっかかりがないのだが、裏ジャケに載せられている写真もそこで撮られたのは間違いなく、おそらくそこを拠点にライヴ活動を繰り広げていた人なのであろう。 全曲作詞・作曲彼女自身によるもので、基本的に遊佐未森とかあの辺のファンタジック・ポップ路線。かなりの完成度の高さで、澄んだ歌声の魔力で一気に聴かせてしまう。マザーグースの詩を基にした小品「うつくしいのは げつようびの こども」がトイポップ風で異彩を放っているが、この曲は先頃のイベント「Saturday Night Spectacular!」でもプレイさせてもらった。癒し系ポップスの蔓延がまだまだ先の話だった92年当時から考えれば、かなりのマニアックな内容かもしれないが、今聴くとすんなり入っていける、まさに早すぎた一枚と言えそう。 ちなみに自主制作歌謡界では未だによくある話だが、制作のみをメジャー・レーベルに委託する自主流通盤というスタイルは、手焼きCD-Rによる自主流通システムの一般化と共に殆ど絶滅した感がある。70年代以前の自主盤は殆どこの手で作られていたのだが、メジャー会社が生き残るためにはもっともっと委託システムを有効に活用させるべきではないだろうかと思う。贋インディーズを立ち上げるよりずっと潔いではないか。 (初出: 2005年2月6日) |
| その4 | 北田朋子/おなかいっぱい胸いっぱい |
|
Amazing/1996年12月発売/中古購入 インディペンデント・オブスキュラが続きます。思いっきりのいい食べっぷりのジャケ写にオーラを感じて即掴みの96年作品。当時18歳のシンガー・ソングライターで、どうやら横浜近辺で活動していたようだ。90年代初頭の所謂「元気印」ガールポップの残骸と、この後隆盛を極めるストリート系の兆候の中間地点に位置するという感じがするが、よく聴くと全7曲各々違った顔を持っていてびっくりさせられる。どきっとするほど大人っぽい表現と、アッパーな若々しさを感じさせる歌声が同居しているんだもの。その上このジャケットとのギャップ。若いってのはほんと恐ろしいよなぁ。 私の選ぶ必殺トラックは何と言っても「野球少年三平君」! 何やかんや言う前に、これで10代ですか! 知りすぎでっせ! この一曲は結構重宝させてもらってます。 なお最近はウクレレを基調に音楽活動を再開&結婚なさったもよう。公式webサイトはこちら。 (初出: 2005年2月9日) |
| その5 | 森丘祥子/Pink & Blue |
|
ワーナー/1990年発売/新品購入 かつて「伝説のユニット」に在籍した、そのユニットを伝説たらしめた人とは別のメンバーが秘かに再出発というのに興味がある。屋宜由佳(元Y'z Factoryの山田優じゃないメンバー)とか根食真実(元Z-1の上戸彩じゃないメンバー。ちなみにこの二人揃って徳間からソロ・デビューだな!)とか猪浦里沙(元リアリー?オムレットパズルの小野真弓じゃないメンバー。リンダ☆リンダの一員としてCDリリースだが、徳間ではない。しかしこうやって調べてみると「OHAガール」周り人脈って英国プログレッシヴ・ロック界並に複雑で興味深いな。アナウンサーまでいるし)とか。この森丘祥子という人はさしずめその80年代版と言えるかもしれないが、彼女が元「伝説のユニット」の一員であるということを知ったのは、リアルタイムでCDを買ってから後のことだった。工藤静香がおニャン子に入る以前に在籍していたことで伝説と化した「セブンティーン・クラブ」の、他のメンバー二人の内片方(当時の名義は「柴田くに子」)だったことが密かに明かされたのである。セブンティーン・クラブ解散後、聖飢魔IIの「蝋人形の館」のビデオ・クリップに出演するなどしていたが、静香の人気沸騰を横目に90年に突如改名してソロ・デビューしたのが本作である。当時どっぷりとガールポップにはまっていて、その筋の有望新人がまた出てきたなと思って喜び勇んでCDを入手した(そういうケースが非常に多かった)。当時のワーナーは五味美保・広田恵・AKEMIなどその手のそそり屋さんに恵まれていたが、渡辺達生撮影によるジャケ写が物凄く色っぽく、いくらアイドルの延長線上にあると言ってもその線で売るガールポッパーが皆無だっただけに、余計気になったのであるが。 ライナーとして飯星景子によるショート・ストーリーが6編収められており、いわば生活感溢れるOLエイジのサントラを狙ったという感じは否めないが、その分手堅いAORっぽい音作りと、アイドル時代より多少進化した彼女の声質が溶合って心地よく響く。唯一収められたカヴァー、ユーミンの「冷たい雨」もうまくハマっている。よく聴くとモノ・ミックスでスペクターに敬意を表したと思しきサウンド! この曲を境とした後半の展開がナイスで、歌声の魅力が伝わってくる。ときめき女優の筆頭がモリー・リングウォルドだった時代を想起させてくれるアルバムだ。 ちなみにこの後あの名曲「夢で逢えたら」をカヴァー、洋酒のCMングに使われて2度もシングルでリリースされ、同曲をタイトルとしたセカンド・アルバムもリリース。小西康陽プロデュースにより、和製AOR名曲をカヴァーしまくるというコンセプトの良作に仕上がっている(「ライディーン」に歌詞をつけたトホホものもあったけど.....)が、アイドル時代の名残りが消えなかったのか、深夜番組のアイドル運動会に出演して画面の片隅で同曲を歌ったり、U局のローカル紀行番組に出演して同曲をお花畑の中で歌うという活動もあった。その後かつての同胞二人の勝ち組ぶりを彼女はどう眺めたのであろうか。少なくとも谷村有美のそれより偉い旦那さんをもらっていなければ、その二人に太刀打ちできないであろう(何たって、キムタクと清原だもんね)。 ところで西郷真由美さんは今どこで何をしてらっしゃるのでしょうか? いえ、伝説ってほどじゃないけど。 (初出: 2005年2月12日) |