ついに出た!!!
THE BEACH BOYS
"PET SOUNDS SESSIONS"
(Produced by Brian Wilson)
に大々的に迫る!!!
まじでありきたりとしかいいようがなくて情けない表現だけど、とにかく待った甲斐がありました。あまりにも壮大すぎる箱がついに到来したのであります。こうして発売日にアップ出来たのも、ここだけの話ですが仕事上の特権を利用して発売日前日のさらにX日前に物をGetすることに成功したためであるわけで(輸入盤を先にGetされた人よりは当然遅れましたが.....この膨大な英文ブックレットとちゃんと格闘できましたか?) まあ筆舌尽くし難い作品であるのは確かですがせっかくページ持ってる訳ですから何とかその魅力についてここで語らせて下さいよ。
さてまずこの美しすぎるアルバム「ペット・サウンズ」と私の出会いについて.....初めて買ったBB5のアルバムが「スマイリー・スマイル」だったというとんでもない事実はすでに他の所で書いていますが、その翌年の1980年、私は冴えないジャケットのリプリーズ盤再発「ペット・サウンズ」を大阪・心斎橋のファッションビル内にあった輸入盤屋さんのバーゲン・コーナーで見つけて購入しました。何とその時、イギリス盤再発でジャケ違いの「スタック・O・トラックス」も一緒に見つけて買った覚えがあります。(いいだろ) 前年に買っていたベスト・アルバムに各面の最初と最後の曲が収録され、さらに「コンサート」に入っていた「僕を信じて」も加えた5曲以外は初耳でしたが、ニュー・ウェイヴ少年だった自分にとっても実に独特な響きがあって最初のうちはなかなか溶け込めなかったんでした(確かに「スマイリー」の方がニュー・ウェイヴな音だもんな) 「これが最高!」という本で山下達郎氏がベスト10のトップに選んでいたわりに、「サージェント」とかビートルズのアルバムに比べると突っかかるものがない感じで。もちろんそれは大きな誤解だった訳なんです。いよいよ次の年にBB5の初期のアルバムをおさらいすることになり(おかげで特典として配られていたペンダントが相当たまった)、彼等およびブライアンの進歩を追っていくに従ってこのアルバムの意味も大きく変わっていくわけです。そんなこんなでブートの「スマイル」まで手にするほどブライアン・ワールドにはまったあげくこのアルバムから抜け出ることが出来なくなってしまったんです。幸いだったのは当時まだ出回っていた疑似ステレオ盤ではなくモノ盤をずっと聴き親しんでいたことでしょう。何しろ他のコンピLPで聴いた疑似ステ曲は、モノ盤の純粋さを著しく損なっていたんですからね。非情なキャピトル。
さて媒体がCDに変わってさらにはまり状態に拍車がかかった末、ついにアナウンスされたこのBOXセットの発売。当初は丁度発売30周年に当たる去年6月頃に出る予定でしたが、マイク・ラヴがごねたりいろいろ問題があって延びに延び(その間にサブ・ポップからシングルが出て我々ファンを狂喜の渦に陥れたり、また必然的ブート騒ぎもあったりしたな)ついにこの11月27日日本盤リリースされたというわけなんです。とにかく内容をチェックしてみましょう。Disc 1の前半は今までモノで聴き親しんだ「ペット・サウンズ」がオリジナル・マルチ・テープを丹念にシンクロさせてステレオ・ミックスとして生まれ変わり収録されています。今までのモノ盤はとにかく単指向性の音の中にめいっぱいの奥行きと深みを詰め込んだ音像が圧倒的で、これは幼少期に父によくぶたれて片耳の聴力を失ったブライアンのトラウマが痛々しく表われたものでしたが、このステレオMIXを聴くとそうした心の傷さえもポジティヴなエネルギーに変えようという現在のブライアンの創造性が伝わってくると同時にボーイズのハーモニーの素晴しさを改めて認識させられます。例のサブ・ポップ・シングルに入っていた「駄目な僕」を聴いた時、2コーラスのブレイクにかすかに入っている声がカットされているのに首をかしげましたが、この曲に限らず今回のステレオMixではそういった音は全て省かれ、かえって芸術性を高めている気がします。
このステレオMIXは単なる入口で、その後Disc 1の後半とDisc 2で展開されるセッションの概要で我々はさらにどつぼにはまります。ブライアンのサウンド魔術師振りに我々はただ耳をそそり立たせて感動せずにはいられない。名うてのスタジオ・ミュージシャンたちをひとつのバトンでコントロールし、細々と指示をあたえつつ雰囲気を取り仕切る様子が生々しく記録されています。たとえば「僕を信じて」の滑稽な自転車のベルによるノイズにしたって彼の気合いが存分に込められサウンドに調和しているのがわかるし、他の曲のあのフレーズも実はこういう意味合いがあったのかと納得させられる瞬間の連続です。何よりもまして演奏だけのトラックを聴いていると、ついつい歌ってしまう。やっぱ歌こそが全てなんですな。
そういう意味でDisc 3の前半の"Stack-O-Vocals"はこのBOXの超どつぼと言っていいでしょう。インスト曲を除く11曲のボーカル・トラックを取り出した内容で、ボーイズのハーモニーの見事さはおろかブライアンの「ドント・トーク」や「キャロライン・ノー」における悲痛な歌声には圧倒されるばかり。決してリミックスのネタには使えない崇高な世界。そしてDisc 3の残りはブライアンの歌う「神のみぞ知る」など貴重な別ヴァージョンや別ミックスが占めています。ここでは何といっても意地の悪い父マリーの助言によってピッチを上げ商品化された「キャロライン・ノー」のオリジナル・ピッチ・ヴァージョンが聴きもの。マリーもたまにはいい事言いますね、このヴァージョンはダウナーすぎて当時のポップの水準を遥かに越えている。しかしこれこそが本来の姿というべきものですね。あと前のBOXにも入っていた「神のみぞ知る」の別コーラス入りエンディング・ヴァージョンは美しすぎます。そうそうもう1枚オリジナル・モノ盤「ペット・サウンズ」が96年盤最新リマスターとして付属している。やはりこれを聴かないと始まりません。この奥行きはこれにしかない良さがありますね。今回のリマスターは限りなくアナログに近いサウンドを再現するべく非常にディテールにこだわった作業で行われており、ボーナス・トラックもないのでちゃんと列車が通りすぎた後CDが止まる。これでいいのだ。
ブックレットはレコーディング・データや写真の他アルバム制作に関わったあらゆる人々のコメントなどが掲載された濃すぎる内容で、これを読むだけでもかなりの価値はありそう。スタジオ内会話の聴きとりまではなかったけどさすがに。ここまで充実してると、やはり値段に見合うだけの価値があると思わず手を打ってしまいます。とにかく、音楽的深みの頂点を体験して見たいという人々全てにこのBOXを買えとは絶対言いません(せいぜい1枚ものの「ペット・サウンズ」は疑似ステLPでない限り買うべきだよそういう人は)が、ほんと歴史的資料としてあまりにも貴重な、20世紀の2/3あたりに咲いた耽美の花を永遠に標本化するための記録となるそんな緑の箱であります。あとはブックレットに書いてある「グッド・ヴァイブレーション」コレクションの発売を切望するばかり.....(きっとこれで「スマイル」を何とかするのだろうな.....)