やってきました総括の季節。うだうだ言ってないで、そそくさと2003年に聴いたものの総括をしようと思います。メインはネタ解説でありますが、確かにネタ熱にやられて普通のものを疎かにしすぎたような気が。確かに愛しい音は沢山あったけど、まず業界全体の混沌に飲まれて真剣に掘り下げる気が薄れたのかもしれないな。
まずは「新作アルバムの部」です。
◎イ・ソウン/THREE: SENORITA (IO/EMI [韓])
◎ウィーン/ケベック (Pヴァイン)
◎Quinka, with a Yawn/火曜日のボート (LD&K)
◎南天夢譚/ジャック・タチの優しい夜 (南天レーベル)
◎二階堂和美/また おとしましたよ (Poet Portraits)
◎パディ・マクアルーン/I trawl the MEGAHERTZ (リバティー [UK])
◎リンゴ・スター/リンゴ・ラマ (ビクター)
◎オリジナル・サウンドトラック/キル・ビル (マーヴェリック/ワーナー)
◎V.A./マッド・フレンチの仲間たち (マッド・フレンチ)
◎V.A./ミュージック・フォー・アトム・エイジ (ソニー・インターナショナル)
※アーティスト名(V.A.の場合ははアルバム名)アイウエオ順
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結局、洋楽の新作に関しては、21世紀突入以降探究心が薄れる一方という傾向に本年も歯止めが効かなかった。贔屓アーティストの新作が出ても長続きしないし、スローンやアル・ヤンコビックは国内盤出ないし(両方BMG!! 反CCCD派の筆頭と言えども許せない部分はある!)。世界全体を見回してもCCCD渦に飲まれて一個一個の作品が畏縮してるという気がする。そんな中、メジャーを離れながらも相変わらずスケールの大きな悪戯を仕掛けてくるウィーンと、逆に己の内面をこれ以上ない程ストレートに(しかも殆ど歌の力を借りずに)描ききったパディ・マクアルーン、そして2003年のビートルズ・アルバムとして理想的すぎた(そう、『レット・イット・ビー...ネイキッド』ではなくて)リンゴのアルバムは是非選んでおきたかった。
腐敗という点では世界中の他のどこよりもそれが顕著と思える日本の市場に関しては、まだ未知なる輝きを見つけ易いという点で幸せであると言える。二階堂さんもキンカも、前作以上にストライク・ゾーンをダイレクトに直撃した好作品を届けてくれたし、Sonokoさんの復活を告げたマッド・フレンチのコンピも新鮮なパワーに溢れていた。「アトム」は樋口康雄という天才的音楽家の創作パワーと、アトムを愛する好き者スピリットが見事に融合した素晴しい企画だった。分りやすい現代音楽転じて棘のある癒し系といった趣きの南天夢譚もとてもよかった。
しかし、回数的に一番聴いたものとなると、やはり韓国の生んだフレッシュな華、イ・ソウンのサード・アルバムに尽きる。きっかけというと恵比寿さんが送ってくれた韓国の歌番組の映像ビデオで彼女を見た事なのだが、曲の良さに加え一種独特の不思議な存在感にまじで一目惚れしてしまった。で、先にセカンド・アルバムを買ったのだが、いまいち印象に残らず。しかし充電期間を経てリリースされたこの第3集では、見事な成長ぶり。しっとりとしたバラードからネオアコ風、R&Bに至るまで多彩な曲調をおいしい声で歌いこなす。出来上がった故の落ち着きが感じられないところも余計よくて、7分咲き位でフル開花の美味しさを漂わせる。やはり新鮮な空気は隣の国に宿ってたと、そういうわけだ。聴いた回数でこれに続いて多かったのは、実はこれであるということもついでに記しておこう。あと「テキ小守」のブー卜(す、すまん....) あっ、女子十二楽坊ファーストは一応「次点」ってことで。余計な機会に聴きすぎたのでちょっと落ちたな。
シングル曲としては、一部買っていない(そう、アレだから)ものも含めて次のような曲が印象に残った。大滝詠一「恋するふたり」(これは別格。以下、アーティスト名アイウエオ順)、aiko「えりあし」、アルガレイ「ある恋の始まり」、おけいさんと安倍なつみ「母と娘のデュエットソング」、KOKIA 「THE POWER OF SMILE」、GQ06「ハイビスカス」、平川地一丁目「とうきょう」、松浦亜弥「ねーぇ?」、矢野顕子「あたしンち」、リズム「てんきゅっ(ニューサマー便)」、そしてもちろん折笠さん絡みの2曲。SMAPのアレには「最優秀ジャケット・デザイン賞」でもあげとくか(笑)。ネタ的観点となると話は別、下を見てくれ。
続いては「再発アルバム・発掘音源の部」です。
◎上田知華+KARYOBIN/上田知華+KARYOBIN plays 樋口康雄 (ウルトラヴァイブ)
◎エリック・リングレン/Sound On Sound (ARF ARF[US])
◎九重佑三子/ゴールデン☆ベスト (東芝)
◎NOVO/novo complete (キング)
◎山下毅雄/黒猫 黒い足音 (ウルトラヴァイブ)
◎V.A./IMPOSSIBLE BUT TRUE: THE KIM FOWLEY STORY (エイス [UK])
◎V.A./Only In America Vol. 2 (ARF ARF[US])
◎V.A./株式会社NAVレコード ヒストリー1〜3 (ポニーキャニオン)
◎V.A./THE GET EASY! SUNSHINE POP COLLECTION (ブティック/ユニバーサル[GER])
◎V.A./ぼくのしるし わらべうた24 (URC/エイベックスio)
※アーティスト名(V.A.の場合ははアルバム名)アイウエオ順
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2003年は邦楽に関してはあっと驚く再発がなかったという印象だが、それもそのはず、NOVOの発掘があまりにも大きすぎた。日本のレコード会社もまだまだやれるということをばっちり示した素晴しい企画だった。「アトム」のアルバムがきっかけとなって実現に前進したと思われる上田知華のピコ作品集も、待ちに待った好企画。決して闇に葬ってはいけない名曲がいっぱいだ。同じ土龍団関連でもヤマタケは、内容の凄さ以上に、言葉狩り問題を堂々回避した快挙に拍手。音源供給元のビクターはちゃんと解ってやってほしい(特にM担当の方)。エイベックスの一連のURC再発も、余計な気配りが一切ない分前の東芝シリーズより上手く行っていると思う(そう、褒めてやることも必要なのだ)。中でもこの一枚は大発見。ネオ童謡というより昨今のピュアな自主制作ポップの源流がある。そして各社必死になって盛り上げたアイドル関連の中では、ポニキャンのNAVレーベル全シングル・コンピという大快挙に拍手。これこそ基本的姿勢と言ってあげなければ。2003年初CD化曲大賞を一曲だけ選べと言われたら、このコンピ(1)に入っている進藤典子の「下町の空の下」にとどめを刺したい。あっ、衝撃的発掘音源と言えばアレを忘れては......やはり黙っとくか。T.Y.P.
海外のものでは、相変わらずサンデイズドの偉業にエキサイトしたものの、そのレーベルは結局選ばれずじまい。代りにエリック・リングレンのARF ARFが衝撃的作品を纏めドロップし、あっと言わせてくれた。エリック自身の10代の頃のデモ音源を集めた「Sound On Sound」は、孤高のポップ・イノセンスに圧倒される凄い1枚。そしてストレンジなレコード宇宙をいやと言う程堪能させてくれる「Only In America 2」の狂気。漏れた2枚、洋ピン・サントラ音源のコンピ「エロスの花道」と定番となったサイケ・コンピ「Deadly Dose Of Wylde Psych」も凄かった。ドイツ・ユニバーサルによる日本のソフトロック・マニアへの挑戦(もちろん合法)と言えるコンピも快挙だったが、ソフロ方面に関しては非合法な快挙が今後次々と起こりそうで大変である........
さあいよいよ本番、「2003年度ネタ曲ベスト10」にいきます。選考基準は2002年12月より2003年11月までの間にメジャー・レーベルからCDシングルでリリースされた曲ということで、ある意味最重要曲である「日本ブレイク工業 社歌」はこの段階で資格を失う事になりますが、盛り上がり始めたのが10月ということで2003年ヒットの資格は充分にあります。むしろ他のネタと並列で語りたくないということもあり、「特別名誉曲」として認定してあげてもいいなと思うのであります。
また一曲メジャー流通ではないレーベルのものも入っていますが、歌っているアーティストの2004年メジャー・デビューも決定していることだし、その辺は大目に見て下さい。そして最も重要なこととして、「デジタル・オーディオCDで出た曲」という規定を敢えて取り外しました。まぁ、CCCDに関しては一年前と全く見解は変わらず、むしろ余計苛立ってる程なのですが、そんなにむきになったままだとたった一曲のとんでもないエポック・メイキングな曲(ネタ的に)を無意識に葬る結果となるのであえて。
振り返れば2003年はテツandトモ、はなわ、ダンディ坂野の活躍に引っ張られる形で、ネタ的作品が可聴領域に溢れたよい年となったのですが、終ってみれば先の3組はネタベスト10に残りませんでした。「なんでだろう」は口づさむ回数も多かったし、ダンディの「オー! ナイスゲッツ」も結構吟味したものですが、ある意味盛り上がり過ぎて醒める部分もありました。また作為的ネタもかなり市場を賑わしたものの、如何せん長続きしない。もちろんCCCDで逆効果を被った曲も数ありということで、結局シビアなセレクションとなった気がします。というわけでネタ語りですが、ここは本当相対的に真剣にやるぞ。(とりあえずアマゾンの情報を直リンという形ではないが入れさせて頂きました。100%賛同というわけではないので....お手数ですがコピペしてチェックして下さい)
10.
みずたにあきこ/お茶犬のうた
2002年12月11日発売/ユニバーサル UICZ-5002
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00006S2F1/ |
セガトイズとホリプロが共同ベンチャーで売り出した癒し系キャラ「お茶犬」の公式テーマソング。「あたしンち」を見てるとよくこのお茶犬グッズのCMが流れてて、初期の頃はジュニアサイズが歌ったほのぼのとした曲が使われていた。この曲がすごい好きで、しばらくしてからこのみずたにあきこの曲に変わった時にはちょっと違和感があったのだが、改めてCDを買って聴いたらこれがほんといい曲で、いい選択したなぁと思った。ほんわりしたキャラに相応しい暖かい感触がある楽曲を、拒絶できない素直な歌声が盛り上げる。しかし何がいいって神業としか思えないこのアレンジ! 随所に背筋をピンと伸ばさずにいられなくなる奇跡的なストリングスが配されており、生の音っていいなぁと改めて感動。作詞作曲者も編曲の人も、きっと心優しい犬好きの女性なのだろう。これもまたキャラ開発の延長線上にある名仕事かもしれない。言うまでもなく、2003年度和み系ネタとしては最高峰。ちなみにカップリング曲は残念賞。
ちなみに「お茶犬」はCATVでアニメの主人公としても活躍し始めたが、その音楽はこれまた私にとって要注意人物の仲間入りをした一人、筒井香織さんが手掛けているんで、是非チェックしなきゃなぁ.......と思う。
9.
アワアワ/NOVAうさぎのうた
〜いっぱい聞けて、いっぱいしゃべれる〜
2003年4月23日発売/サイトロン SCDC-248
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00008DZ2Z/ |
お茶犬を遥かに凌ぐ人気と知名度を獲得した、2003年度最大のネタキャラと言える存在が、英会話教室のCMから派生したこの「NOVAうさぎ」。可愛さ以上に際立つ妙な存在感はまさにネタそのもので、逆説的に「可愛い」と言わせてしまう魅力がある。そのCMで初期の頃から流れていた印象深い曲を元に楽曲化したのがこのシングル。ポップ・マニアの間では早くから異端ユニットとしてもてはやされていたアワアワ(メンバーの一人がNOVAうさぎのキャラ開発にも関わっている)が担当し、共同プロデュースで先頃解散を表明したシンバルズのメンバーが参加している。発売された途端品切れを起こす大ヒット(ゲーム音楽を主に扱っていたレコード会社にとっては正に寝耳に水)となり、上半期のネタではテツandトモとはなわと並列で語られる事が多かった。まぁ、実体がない分ダンディに譲ったというわけだな。
必要以上に作り込み過ぎた楽曲は一部であまり評判よくないけれど、ポップ・ソングとしてはかなりいい線行っている。しかしネタ的核心は5トラック目に収められた「CMヴァージョン」に宿っている。例のフレーズが最初から最後まで繰り返され、無意識なフリーク・アウト状態を誘発。ネタ者としては他の何かと混ぜずにいられなくなるのだ(個人的にはパット・メセニーと合体して「ゼロ・トレランス・フォー・NOVAうさぎ」というのをやった)。まさに「いっぱい聴けて、いっぱいネタになる」ヴァージョンである。
8.
財津一郎とタケモット/ タケモトピアノの歌
2003年9月25日発売/ブロー・ウィンド BWCA-1012 (CD+DVD)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000AVSW4/ |
「NOVAうさぎ」のCMヴァージョンは3分ちょっとだったが、そのコンセプトをさらに極端に押し進めたCDがこれ。関西地方で評判を呼んでいるという、中古ピアノ店のCMで使われている曲であり、「このCMが流れると泣く子も黙る」という都市伝説も生まれた問題作。その曲をどうしたかというと、15秒のCMで流れる音源2種を何と各60回繰り返す、計30分にも及ぶエクストリームな構成にしてしまっているのである。ここまでくると楽曲も何もない、ぶっとんだコンセプトの賜物としか言い様がないのだ。無意識に流していても、3分を過ぎてくると錯乱状態に突入。30分フルで聴き通した者の精神状態を覗き見してみたいものである。しかも全く同じコンセプトのDVDまでついてくる。こちらも15秒CM2種の映像を(以下略)。ここまで来ると商品も何もない(以下略)ということで、かつて「花のピュンピュン丸」のテーマ曲を歌った財津氏のネタ歌手としての生命力の長さにも感服せねばならない。
何が一番恐ろしいって、これがピアノ製造メーカー直系のCD店の店頭に大量に並べられているのを見た時である。CCCD問題と関係ない所で、売る側も危機感ないんだなって解った。
7.
国仲涼子/琉球ムーン
2003年4月25日発売/マトリックス MXCD-001
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00008VHFG/ |
「ちゅらさん」で一躍国民的人気女優となった国仲涼子の歌手デビュー・シングルで、ちょっとした後日談とも言える「ちゅらさん2」のテーマ曲として使われ、彼女の所属事務所系列にあるインディーズ・レーベルよりリリースされた。その割に結構売れたので、メジャーで展開しない必然性があったのかと思われたが。その辺はやはりこの曲が持つ意外なネタ度に起因するのであろう。
まずは近年稀に見るまっすぐな表現に彩られた歌詞に注目。所々メロディの展開とうまく噛み合っていないところもあって、それがかえって清々しいのである。表現の多彩さに走ってしまって純粋さを欠いてしまった昨今のJ-POPにない潔さがある。ちなみに作曲者のミヤギマモル自身の自唱ヴァージョンも、後に同じレーベルよりリリースされているが、こちらは決定的なネタ要素が欠けていて素直に楽しめなかった。それが何かと言うとやはり国仲涼子のヴォーカルである。歌詞に負けず、まっすぐすぎて怖い。そもそもこの人の表現力を語る時、某冷蔵庫のCMをどうしても引き合いに出さずにいられず、そこでは決定的にリズム感覚のずれが見受けられる。そんな欠点を必死に伸ばさんとしている彼女のがんばりが、このCDの素晴しさの一つだろう。機械に頼りがちな昨今のJ-POPにない、これも潔さである。私も聴いているとついつい、彼女のメイン・ヴォーカル部分ではなくバック・コーラスのフレーズを一緒に歌いがちになってしまうのだ。
結局彼女は紅白に出て歌う事はなかったが、彼女をブレイクさせたNHKとして数年前の反町隆史の再現はしてほしくないという親心があったのだろうか? そんな彼女のメジャー・デビュー・アルバムが2004年2月発売決定した。多彩な内容になるらしいので楽しみだが、一つ心配なのは発売元がポニーキャニオンであるということだ(あとは言うまでもないだろう)
6.
パレット/恋する新幹線
2002年12月21日発売/ガウス GRCX-17
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000075AUN/ |
「おさい銭」で一躍我がネタ道的最重要レコード会社へと躍り出たガウスエンタテインメントからの、2003年度最初の強烈な一撃。一聴して解る通り、小林旭の名曲「恋の山手線」を元に近代的コンセプトで再構築した所謂カタログ・ソング。そう言えばガウスはこれのちょっと前にドギー・バッグの「新・自動車ショー歌」という同じくアキラへのオマージュ的シングルを出してもいるが、こちらは意外なきっかけによりクローズアップされてしまったっけ(ジャニ−ズ絡みの事情があるので、まぁここでは深く触れません)
歌うのは5人組ガールズ・ユニットのパレット(しばらく後になってガウス系の歌番組で見た時には、メンバーが一人減っていた)。いかにもなイケイケ・アレンジにモー娘。以降を象徴する茶々入れまくりの歌展開だが、根本的に歌謡曲スピリットが全然失われていない。流行歌というコンセプトがエイベックスやハロプロの底辺を無意識に通過しているという事実を極端に前面に提示した、これぞガウスというべきいい仕事であろう。カップリングの方もイケメン風「純」が歌う、よりアキラ的コンセプトに忠実な別歌詞・別アレンジの「恋の新幹線」が収録され良心的。
5.
早川まみ/みんなでフーフー
2003年2月1日発売/テイチク TECE-8574
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00007M8W3/ |
新幹線が何だ、ピアノが何だ! これ以上に捻れた概念はまずないと思われる、「インスタントラーメンイメージソング」の登場。しかもファストフード店でパワープレイされていたというから余計訳解らない。とどめを刺すのがプロデュースがあの河村隆一という事実だ。ここまできて普通の内容が期待できるか。
まず耳に残るのが純真としか言い様がない歌詞で、手掛けたのはRKのライヴで前座を務めた経験もあり、2003年ビクターからメジャー・デビューを果たしたあずままどか。インディーズ時代に出したアルバムではどちらかというと内省的作風を押し出していたが、ここでは全編ネタ的美学に彩られた表現でむしろ脱力する。RKプロデュースの賜物は歌い手のフレージングに僅か残されているのみという感じで、その線を期待して聴くものではない。さすがに「おさかな天国」やらその手の曲の領域に食い込むことはなかったが、好き者にとってはインスタントラーメンと同じ程ジャンク故の愛着を感じてしょうがない一曲である。
4.
伊達めぐみ/みんなdeカンパイ!
2003年7月24日発売/ガウス GRDE-141 (8cmシングル)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00009V9HG/ |
2003年度ガウス最強ネタ。と同時に、最後まで8cmCDシングルに固執したメーカーの一つであるガウスの最後の8cm新譜の一枚(当然、他のメーカーを含めても.....)ということで感慨深い一枚。こちらも所謂カタログ・ソングであるが、色々と列挙されるネタ(そう、本来の意味でのネタ!)が全てビールという崇高な存在の前では傍役であるという、終ってみれば居酒屋や寿司屋や焼肉屋で大騒ぎアンセム。しかし無邪気に歌われるとついつい引き込まれる。所々にフィーチャーされた栓を抜く音、大騒ぎの声も左右にパンしてぶっ壊れムード倍増。しかし曲の最後ではちゃんと「飲み過ぎないでね」と警告することを忘れない。真っ当な演歌歌手としてデビューした伊達めぐみにとってはこれが3枚目のシングルにあたるが、願わくばこの路線を貫き通して平成の三矢恵子とか花井真理子とか越路愛子を目指して欲しいと思う。いや、売れてほしいとは思うけど。
3.
かっぱちゃんチーム/ サンバかっぱちゃん
2003年3月26日発売/キング KIDX-732 (8cmシングル)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00008CH3G/ |
先に触れた「日本ブレイク工業 社歌」は企業系ネタの可能性を我々に提示してくれたが、考えてみればこの曲も企業系ネタと認定できる一曲なのであった。無意識に手にとった時には全く気付かなかったのだが。
我が心の故郷である浅草の宮田レコードでいろいろと漁っていると、ふとこの妙なオーラを放つものが目に入った。即時買い決定。で、聴いてみる。な、何なんだ??? コンセプトも何も、ちょっとこれはないんじゃないか。徒者じゃないよう。二人のヴォーカルは終始ユニゾンだが、所々1音以上ずれているし。歌詞もかなりぶっとんでいる。大体「ヘロヘロトロトロ」というフレーズを、危ない化学物質でハイになっている状態の描写以外に解釈できるわけがない。無理矢理4番まで歌い切った「サンバかっぱちゃん」の次は....「かっぱちゃん音頭」かよっ! 曲も詞も一緒だよ。ただ二人の声が別のベクトルに....やはりぶっ壊れている。(ちなみに水前寺清子が一曲目サンバ、2曲目音頭と全く同一のコンセプトを持ったシングル「キッカケサンバ/きっかけ音頭」を11月に発売したが、これを意識したということは絶対ないだろう)
一体このかっぱちゃんチームとは何者なのか。うちのサイトにも時々この曲名でサーチが入るので、有線でかかって聴く人を錯乱させることも度々あるのか。深層まで調べているうちに、この人達はどうやら三重県に実在するある不動産業者の絡みがあるらしいということがわかった。このかっぱちゃんチームは、そこの女性社長の娘さん(主任とのこと)と孫娘さんによって構成されているらしい。ということはジャケット、どっちがどっち? 親子とは思えない。作詞が社長本人、作曲はその旦那ということだ。公式を見つけて覗いてみたが、随所にかっぱのマークが輝いているし、事務所内部の画像を見たら、少なくとも4ケ所にかっぱちゃんチームのポスターが貼られているのを確認した。
まぁ、ファミリー・アフェアといえ、NBKにもできなかったメジャーでの発売を実現したという点で、この曲はあまりにも偉い。そして同じ程とんでもない。よって即時ネタ決定だ。。(P.S. 側近の方、情報どうもありがとうございました! 2004年8月後記)
なお、幕間として一曲ボーナス・トラック、美沢のぞみの「SAITAMA・夢・音頭」をここに添えておきたいと思う。これは2002年8月インディーズから出たシングルのカップリング曲のため、今回の資格から外れている曲であるが、かっぱちゃんと同質の妙さがありまくりで大変な事になっている曲であり、ネタ好きの方は追究して損はしないと思う
2.
上海太郎舞踏公司B/ 交響曲第5番「朝ごはん」
2003年6月11日発売/ユニバーサル UCCS-5001
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00009CHDV/ |
出合い頭の衝撃といえばこれを凌ぐものはないのではないかと思われる大傑作。4月某日、池袋の愛すべきCDショップ「五番街」にいると、ふと「朝ごはーん」という合唱がベートーヴェンの「運命」のフレーズに乗って流れてきた。お堅いクラシックの名曲に不釣り合いな朝食の風景。一体これは何なのだ? 呆然としていると、別のお客さんが同様の質問をお店の人に投げかけていたので聞き耳を立てたら、どうやら6月に発売されるという。これは発売日即買い決定だと思いつつ、どうってことないネタを買って店を後にした。
実はこの曲は既にインディーズから出たアルバム「Bravissimo 1」に収録されており、関西地方ではかなりの話題を呼んでいたものだった。シリアスな演劇方面で活動を展開する謎の団体が取り組んだ音の冗談であり、ゆえにインディーズの枠では扱いづらかったのだろう、東京で同アルバムを見たことは一度もなかった。というわけでメジャーからの発売と同時に即買い。アルバムの方も8月にメジャーから再発されている。それにしてもただ笑わせるだけではない、緻密さを極めたサウンド演出はさすが演劇系の人だなぁと感心する。ベートーヴェンの複雑な曲の随所によくもこれだけ妙な物語展開を隙もなくはめ込んだものだ。ボーナス・トラックとして収録されたブリュッヘン指揮のオーケストラ・ヴァージョンのおかげで、余計ためになる度が高まっている。クラシックを扱う部門でこれをリリースすることに成功したユニバーサルの偉業に拍手。ネタを解っているレコード会社だ(ダンディの「ゲッツだぜ!」ではコケたけど)
さあ一位だ。これ以外に何を選べというのか。うぉううぉううぉ........
1.
星井七瀬/恋愛15シミュレーション
2003年10月15日発売/プチヴァージン TOCT-4715 (CCCD)
TOCT-4716 (CCCD+DVD、限定盤)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000C4GIE/ |
このコが我が視界に現れたのは、同名清涼飲料水のCMガール「なっちゃん」3代目としてだった。かつては「なっちゃん」という言葉は小島アナが意匠登録すべきと言ってた程で、初代「なっちゃん」田中麗奈(れな、です)にもピンとこなかったのだが、このコは違った。「私はなっちゃん、歌って踊る....」のフレーズと何事にも変えられない純粋さが頭の中で踊り続けた。
そのフレーズをフィーチャーしたCMソング「ガラスのクツ〜なっちゃん」が6月、「なっちゃん」名義でプレデビュー曲として出た。CCCDだったにも関わらず、おまけDVDに免じて早速購入。CMヴァージョンが好きだった自分としては、曲全体に何か飾りすぎと印象を抱き、彼女の存在も自然にフェイド・アウトしてしまった。10月になって、星井七瀬としての正式なデビュー曲が発売されるというニュースが入っても、いまいちピンとこなかった。CCCDだし。どうでもよくなっていた。
しかし、間違っていた。えっ、2ちゃんの洋楽板(!)にスレが立って、妙なレスで伸びまくってる? ECDが絶賛してる? フクダさんの掲示板でも複数の人が騒いでる? おいおい。再び七瀬熱が高まってきたぞ。じゃ、買わなきゃ。発売10日後、やっと入手。
ううううううううぉううぉうおおぅぅぅう! 何なんだ? というのが第一印象。しかし、CCCDを繰り返しかけずに済むようにダビングしたカセットを何度も聴いているうちに、どツボにはまっていってしまう。好き者を悩ませる悪魔の呪文のようだ。まずは最初の2秒の音のずれ具合で「落ちる」。意図的に変なテイクを採用したのだろうか、制作陣の企みにしょっぱなからがんじがらめ。ヒップホップの王道とは程遠いゆる〜いリズム・トラックには、サイケ的エッセンスも満載。そして七瀬嬢のラップは、実はラップではない。新たなアイドル・ポップの表現そのものである。変ではあるけど意味が通ってる歌詞は、ハルカリのような不条理さと無縁で、そこが一部の人を遠ざける要因かもしれないのだが、待てよ、これはあくまでもアイドル・ポップなのだ。ヒップホップもどきと思ってはいけないのだ。リップスライムがこういうものを制作する所を想像したくないのだ(ムフフ)
そう、これはまさしく平成の「白馬のルンナ」である。1967年、歌うのもままならない娘が歌う歌という概念が殆どない時期、演歌の大御所・船村徹先生がひねり出したのがあの曲であり、アイドル・ポップスという概念の誕生はその曲を下地にしていたのだ。今、アイドル・ヒップホップという概念を白紙から作り出そうという作戦の元生み出された最初の曲がまぎれもなくこの「恋愛15シミュレーション」なのである。作者のSplash Candyの自演アルバムを聴くと、クラシック・ロックに裏打ちされた王道ポップの職人芸というイメージが強く、そんな人達があえてヒップホップ的方法論に乗っ取った曲を作ったと考えると余計納得なのだ。演歌の大御所がミュータントなアイドル歌謡を「発見した」のと、要は同じなのである。
そして2004年。「白馬のルンナ」、「帰ってきたヨッパライ」(別のとこで書いたが、「NBK社歌」の盛り上がり方はまさにこの曲のそれを想起させる)を生んだ年が明けて訪れた昭和43年は、とんでもないミュータント・アタックが続出した歌謡史に残る一年だった(船村徹先生のこの年第一発目となった曲が、言うまでもなくあの「スナッキーで踊ろう」である)。同様に平成16年はとんでもないネタを沢山もたらしてくれるのだろうか。楽しみである。内藤洋子も帰ってきたことだし。
そうか、レーベル写真(通常盤と限定盤で色違い!)で七瀬が着ているユニフォームの「37」とは、「あれから37年目」を意味していたんだな。
なお、特別賞として次の3曲を上げておこうと思います。いずれもネタ的概念に基づく選出ですが。
【最優秀歌唱賞】TARAKO/子どもって...
(『僕はメロンにメロンメロン スーパーキッズ・CMデラックス』収録 : BMG BVC3-38001)
【ベスト・カヴァー賞】ジュエミリア/ALL THE THINGS SHE SAID (ユニバーサル UPCH-5192)
【最強問題提起作賞】一青窈/なんもない (「金魚すくい」カップリング : コロムビア COCA-15495)
【ベスト・リミックス賞】考えましたが、今年市販された曲にアレを越える名作がないことに気付いたので選考取り消しです。