10月の「ココロの寄せ鍋」(上ミノ大量放り込み)
加羽沢美濃
「ラピシア/加羽沢美濃ベスト・セレクション」
Denon COCQ-83454 (2000年9月30日発売)
部屋の空気を見事に浄化してしまう音楽。いかなるオケージョンをも爽やかに彩ってしまう音楽。素直で気取りのない高貴さがさらっと溶けている音楽。その供給主が、コンポーザー・ピアニスト、加羽沢美濃。1997年11月、クリスマス・スタンダードを集めたアルバム「クリスマス・メロディーズ」で颯爽と登場以来、丸芽の心を引き付けて止まない存在である。というのも元々ピアノ・インスト好きってのもあったのだが、同月にリリースされた「メモリー・オブ・1997」で、電気グルーヴの「Shangri-la」等97年のヒット曲をピアノ・ソロにアレンジという事実を知って「この人、絶対ただ者ではないぞ」と確信。しかも美人ときた。追っかけなきゃしょうがないということで、早速同年12月、インストア・イベントで彼女と初遭遇。凄い演奏能力、いや正確に言えば凄い直感的音楽センスと、同じ程凄く天然な人柄に魅せられてしまった。以来、彼女がリリースしたアルバムは、コラボレーションものも含めて11枚。そして私がコンサート、イベントに足を運んだ回数も11回を数えるに至った。
そんな美濃さんの音楽を凝縮したアイテムとして、初めてのベスト・アルバムがリリースされた。といってもDENONレーベルの企画ものということで、限定発売というのがミソ。早く手に入れないとなくなっちゃうぞ。よって、曲者のベスト盤しか紹介しないココロの寄せ鍋の罠にゆうゆうと引っ掛かってしまったわけ。
優しい価格設定と同じ様に、選曲もビギナーに優しく、クリスマスものを除く過去のアルバムからくまなく選ばれている。まさに美濃グレイテスト・ヒッツといった趣き。まず衝撃の「メモリー・オブ・1997」からは、SMAPの「セロリ」、安室奈美恵の「Can You Celebrate」という2大ヒット曲。安室自身の結婚に乗じて何度も繰り返し流された後者が、ここでは明朗で弾むようなイメージで再現され、美濃さん自身の結婚への憧れを表現している(?)。問題の「Shangri-la」が収録されていないのが残念。これは最大のヒットと個人的に思うんだけどなぁ。翌98年に入り初めて出たのが、70年代のフォーク曲をピアノ・アレンジした「MINO Meets フォーク&ニューミュージック」。ここに収録の「神田川」は、当時の丸芽のコメントから抜粋すると「ガラスの桶の中でブランドものの石鹸がカタカタ鳴っているイメージ」に転調され、このコンピの中では最も毒が効いた部分と言えそう。続いて鈴木光司氏の小説をモチーフとした「楽園」をリリース。これは個人的に彼女の最高傑作と言える出来で、ここにも「ユーラシアの大地」「ラピシア」「赤い鹿の石」と3曲セレクト。彼女の先鋭性と優しさが平行して伝わってくる名旋律揃いで、テレビのBGMとしても相当愛された。案の定彼女はこのアルバムに続いてドラマの劇伴の仕事を手掛けることになる。恒例の「メモリー・オブ・1998」がそれに続き、ここにはSMAP「夜空のムコウ」と「タイタニック」のテーマ曲「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」が収録。個人的にはT.M.Revolution、GLAYの曲のぶち壊しが爽快だったのだが....。99年第1弾が、禁断のディズニー世界に果敢に挑んだ「ホール・ニュー・ワールド」。ここではマイルスの名演で知られる「いつか王子様が」を華麗に。私的には「小さな世界」が....ああ欲を言いだしたら止まらない。99年は怒濤のリリース攻勢が続き、コンサートでも何度も息の合った掛け合いを楽しませてくれた高嶋ちさ子さんとの「CHISA & MINO」と、2枚目のオリジナル曲集で旅に題材を求めた「やさしい風」が立続けに。前者からは、98年のコンサート用に作られ、「ちさ美濃のりのりの曲」という仮題をその場で付けた美濃さんに「殺すぞ」とツッコミを入れたちさ子さんのやりとりが印象に残る「マンダラ'98」が選ばれ、後者からはタイトル曲と「雨のプラハ」「夕焼け雲」の計3曲が。最後の曲に歌詞を付けて楽曲化しようというキャンペーンは完結したのだろうか。願わくば美濃さん自身の歌で聴きたいもの.....。この年の締めくくりもまた「メモリー・オブ・1999」。このアルバムでの「だんご3兄弟」の破壊ぶりはさすがと唸らせてしまったが、生演奏を聴いた時は「ああこんな遠くまで来てしまったんだなぁ」とため息が。しかしこの曲はここには選ばれず、やはりめちゃくちゃ大ヒットした宇多田ヒカルの「First Love」と、癒し系の代名詞のようになってしまった坂本龍一の「Energy Flow」が収録された。後者のアプローチは大先輩の教授に敬意を払いつつもデリケートな乙女らしさが一杯で、ただの癒しサウンドに終わっていないところがさすが。今年2000年には、「クラシック良く知らないんです〜」と豪語した彼女が果敢にクラシックに挑戦した「ピアノ・クラシック・ファンタジー」がまず登場。かえってポップなアプローチをとった彼女の柔軟な音楽性が光る一枚で、ここには村治佳織のギターの向こうを張るように「アランフェス協奏曲」を選出。続いて出たのが、NHKのアニメ番組「くまの子ウーフ」のサントラ盤。アニメの劇伴をピアノ一台でというのもある程度野心的試みだが、美濃さんのお茶目な部分が最も出た作品となっていた。ここでは家族愛を表現した「しあわせなウーフ一家」が聴ける。そうそう、アルバムについてコメントできずじまいでしたが、あの高木綾子も参加してまっせ。
こうして効果的に配列された(紹介文は順不同)17曲を聴いた後で、最後に凄い贈り物が。99年新春放送されたNHK-FMの番組でベールを脱いだ、美濃小学四年生時の伝説の作品「テキサス」が初めて商品化され、収録されたのだ。もちろんこのアルバムのための新録ヴァージョン。まさに何も知らなかった少女がこんなに凄い作品を......我々の息を奪いつつ、このベスト盤は幕を閉じる。さて、恒例の「メモリー・オブ・2000」がいよいよ11月にリリース決定。今度はモーニング娘。の曲が多く取り上げられているようですが、初心に帰ったようなアレンジ術期待したいものです。ますます幅広い分野に飛翔する美濃さんの今後に期待なのだっ!
しっしかし......萩原貴子(フルート)までDENON入りとは......今度は縦の人獲って欲しかったのにぃ.....(完全私情)
さて「ココロの寄せ鍋」も次回で完結することとなりました。屈折したベスト・アルバム道にも遂にピリオドが.....最後は意表をついて、めちゃくちゃ王道アイテムで勝負するかも。乞う御期待。

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