2月の「ココロの寄せ鍋」(kihnぴら多め) Greg Kihn "Kihnsolidation:The Best Of Greg Kihn" Rhino [US] R2-70900 (89年発売)
グレッグ・キーンといえば、日本ではMTVの夜明けに乗じて全米ヒットの波を受け結構ヒット(オリコン77位)した「ジェパーディ」でしか認識されていない可愛そうなアーティストである。確かにMTV時代の申し子というイメージも大きいんだが、実際は60年代の爽快感溢れる西海岸ロックの面影をニュー・ウェイヴ以降のタッチで拡張してみせた、好青年ロックというべき持ち味を身上とする人なのだ。今ならスローンとか、その手のバンド好きな人に是非聴いて欲しいんだな、是非。コンピ収録を経て、76年にアルバム"Greg Kihn"でデビュー。以降シスコを拠点とするビザークリー・レーベルにアルバム9枚を残した後、EMIで更にアルバムを2枚リリース。ライノから発売されたこのベスト盤は、ビザークリー〜EMI期から18曲を寄りすぐったもの。ちなみにこのベストに続いてライヴ盤(これは冴えない)をライノからリリースした後、自らのインディ・レーベル"Riot""Clean Cut"からアルバム3枚をひっそりリリースと、現在も地道に活動を続行している。
一応私もこのベストが組まれる前に各アルバムから曲を選んで90分テープとか作って聴いていたほど思い入れ強いアーティストなんだけど、その90分テープとこのベストではヒット曲以外の選曲がかなり違ってる。自分はやはりハードなロック寄りの曲が好きだったんかもしれないな。このベストではよりメロディ重視のポップなロックが多く選ばれてるという感じで。本人が選曲に加わっているところから考えるに、それらの曲がライヴ映えしていたんだろうなぁ。ファースト"Greg Kihn"からは(8)"Any Other Woman"一曲のみが選ばれている。続く77年作"Greg Kihn Again"には、ロック界における彼の名声を高めたブルース・スプリングスティーンのカバー曲(13)"For You"が収録されている。バーズの「ミスター・タンブリン・マン」70年代版とでもいうべき爽快感溢れるヴァージョン。このアルバムからはあと一曲(14)"Madison Avenue"が。グレッグ・キーン・バンド名義での第1作、78年の"Next Of Kihn"は一気にニュー・ウェイヴ感を高めたタイトなサウンドが圧倒的なアルバムで、ここからはシングルとしてヒットしかけた名曲(12)"Remember"と(11)"Sorry"が収録。"For You"のカバーを聴いて感心したスプリングスティーンが書き贈った名曲(15)"Rendezvous"が収録されていたのが79年の"With The Naked Eye"で、このアルバムからテイチクによる日本盤リリースがスタートしている(が、殆ど売れず.....) これも結構いいアルバムなんですが。もう一曲(16)"In The Naked Eye"がここからの収録。続いて80年リリースされたのが"Glass House Rock"。派手なトラックはないが、じわじわと聞き手を揺さぶる作品で、ここには(6)"Small Change"と(17)"Anna Belle Lee"が収録。そして翌年の"Rockihnroll"でいよいよ全米大ブレイク。シングル・カットされた(1)"Breakup Song"は16位まで上昇。ライヴでの定番曲(7)"Can't Stop Hurtin' Myself"もここからのもの。続く82年の"Kihntinued"から日本での配給元がワーナーに変わり、邦題はなぜか「土曜日の放課後」。シングル・カットされた(9)"Happy Man"はヒット・シングルとしてはいまいちだったが、ビデオ・クリップは抜群に面白いものに仕上がっていて、日本での認識度も大幅アップ。(10)"Testify"もここからのナンバーである。そしていよいよ83年の"Kihnspiracy"で(2)「ジェパーディ」("Jeopardy")の大ヒット(全米2位)が生まれる。さらに磨きがかかった豪華なプロモ・ビデオ、そしてダンス・フロアで流れまくったことも勝因だったんだろう。後者はピンク・プロジェクトというグループがマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」と合体したシングルをリリースしていたし。(「ビリー・ジーン」はスティーリー・ダンの「ドゥ・イット・アゲイン」と合体したクラブ・ハウスってグループの盤もあった) このアルバムからは(3)"Someday"も収録。このヒットの波に乗って翌84年に出たのが"Kihntagious"だった。第1弾シングル(5)"Reunited"は「ジェパーディ」の続きのようなビデオ・クリップ(ちなみにこの間にアル・ヤンコビックのパロディ曲「クイズ・ジェパーディ」のビデオのエンディングにグレッグ自身が登場し、クイズに負けてテレビ局から放り出されたアルを車に乗せて新婚旅行に......)が話題となったが、100位にも入らなかった。当時同郷のヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが「SPORTS」でめちゃ売れしていて、相当ヒューイを恨んだことを覚えてます。(とか言って翌85年の武道館コンサートは行ったんだけど、今となってはどうでもいい) アルバム自体は毎度のことながらそこそこにナイスなものでしたが、バンド内に内紛があってさらにビザークリーをも追い出されるというアンハッピー・エンド。85年にEMIに移籍して、2nd以来のソロ名義となる"Citizen Kihn"をリリース。(毎回タイトルがうまいねぇ) 続き物ビデオ・クリップの完結編もとなった(4)"Lucky"がシングル・ヒットしたが、曲・サウンドとも精彩を欠いていた感じ。ギター・ソロが悲しすぎ。86年にはEMIでの2作目となる"Love And Rock And Roll"をリリースしたが、この時はバンドに後にミック・ジャガーのバックで名を上げるあのジョー・サトリアーニが参加していた。ここからは(18)のタイトル曲が収録されている。
グレッグ・キーンの魅力は毎回アルバム毎に楽しませてくれるカバー曲にも表われていて、これはインディでの最新作"Horror Show"まで続いている。ざっと列記しただけでもバカラック、バディ・ホリー、ジョナサン・リッチマン、ジャッキー・ウィルソン、ヤードバーズ、パッツィ・クライン、ホット・チョコレート、オンリー・ワンズ、エディ&ホット・ロッズ、キンクス等々....このベストでは"For You"一曲だけというのが惜しい。各オリジナル・アルバムはドイツのラインからCD化されていたのだが最近は滅多に見つからないし、運よくてこのライノ盤ベストが見つかる位ってのは非常に残念。やぁ、もう少し書きたいけど、あまり熱くならない方がいいし.....