
1. スクール・メイツ+ジミー竹内=モンキーズ
(Ultra Vybe/STANDARD disque CDSOL-1053 69年発表;2002年8月24日再発)
まさに教本と呼ぶべき快仕事を放ち続ける(といっても、その一部が既に入手困難な状況にあるのは惜しすぎ)土龍団の"STANDARD disque"から、スクール・メイツ関連のCDが2枚登場した。同時発売の『ベスト・オブ・スクール・メイツ』は貴重なトラックも沢山入っていて、むしろ「教本度」が高い方であるが、まずは見送り。このアルバムの方はというと、モンキーズの曲を日本語カヴァーしたという斬新な試みで買いに至らせたのは言うまでもない。ずっと前から気になっていた作品だったのである。嬉しいCD化。
芸能プロの考えるグループ・サウンズの基本ってのは、つまるところ見てくれ的には66年までのストーンズ、音楽的には同時期のビー・ジーズ、そして戦略的にはモンキーズだったのではないかと思う。映画「ヘッド」で歌われた通りの「哲学なしの商品イメージ」、それにロック的かっこよさと整頓された高貴な音響があれば若い女の子なんてイチコロよ。で、そんなモンキーズの見過ごされた音楽的側面を、イカすヤングの代表的存在だったスクール・メイツと共に探検していこうというのがこのアルバム。水先案内人は日本のグルーヴ界を常にリードするドラマー、ジミー竹内。ナベプロならではの粋なお膳立てが効いている。まぁ、きっかけは当時モンキーズを出していたRCA(至り至って現BMGファンハウス)がビクターから独立したばかりで、カヴァー盤出して盛り上げようといったところか。時期的には、平山三紀や白鳥英美子がGS映画で乱舞していた頃と、キャンディーズの3人や太田裕美が在籍し、アイドル時代の土台を形成した時期の狭間にあたり、ジャケを見るといかにも当時の「フツーのコ」といったイメージの男女が並んでいるが、そんな中にしっかり可愛和美や鶴間エリがニッコリしているのを確認できる。
世界的にも全曲モンキーズのカヴァーから成るアルバムってのは他に2枚しか知らないが、ジミーのトータル・プロデュースによって単なるカヴァー集と一線を画したものになっている。何せ編曲とドラムの他にも、全曲の訳詞を担当しているのだ。「えっあの曲がこんなに?」感も漂う新鮮なアレンジに乗せて、全編若い歌声が沸き立ちまくる。その癖して、例えば「ランディ・スカウス・ギット」の歌詞とか、出来上がり状態に至っていないような「夢の世界」などいくつかの瞬間から、ジミー氏の屈折したモンキーズ観が伝わってくるのがまたむず痒い。音楽的に高評価するプロはいないんだな、じゃ俺がやったろかという意気込みが振幅激しく表われる。原曲のぶっ壊れ感が無視され、躍動的ポップスに仕上がった「タピオカ・ツンドラ」や「マグノリア・シムズ」(こちらは今回初めて発掘された貴重トラック)、逆にクールな印象の「デイドリーム」など、聴きものが多いのは確かである。あの問題作「ライティング・ロングス」(ここで言及してたやつ)はコーラスなしでひたすらドラムを聴かせるグルーヴ・ジャズ度高いアレンジになっており、稲垣次郎とリズム・マシーンの「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」ほどの衝撃度はなかったな。最後に発掘トラックの一つ「タピオカ・ツンドラ」のアカペラ練習版にはニンマリ。こういう芸当が土龍団の偉い所なんだなぁ、って言っておこう。槙みちるのシングル「若いってすばらしい」の両面もおまけトラックとして収録。
2. 伊東きよ子/23時の女〜ラヴ・イン〜
(Showboat/Sky Station SWAX-58 70年発表;2002年8月24日再発)
こちらも凄いCD化。トリオ/ショーボート音源の再発を手掛けてきたスカイ・ステーションが、今年からぼちぼちCBSソニー関連の音源を再発開始。外部リイシュー・レーベルといい関係ができる訳がないと思っていたソニーのイメージが覆り始めると同時に、ソニー初期に残されたあっと驚く幻の名盤へのつのる想いが勃発。しかししょっぱなからこれである。やられました。
「花と小父さん」等のヒットで清純派キューティ・ポップ・シンガーとして知られた伊東きよ子が、果敢に取り組んだコンセプト・アルバム。全体の構成を天井桟敷に所属していた萩原朔美が担当し、作家陣にも田中未知やJ.A.シーザーなど桟敷周辺の人物が参加。さらには全編の編曲をクニ河内が担当と、まさにポップと前衛の最前線が交錯した作品である。曲間にモノローグ、というよりミニ・ドラマと読んでもよいトラックを挟みながら、一人の女性の心情が綴られていく。はっとさせるアレンジ術に彩られつつも、ポップ音楽としては耳当たりが非常にいい。伊東きよ子の表現力に助けれらているというのもあるが、そんな付き合い易さの裏に盛られた毒がいかにも桟敷ワールドだ。中年男性にこそリアリティを感じるという「危険かしら」や、2年後のヘレン・レディの「私は女」より遥かに力強い「女の宣言」を、昨今の女性像にあてはめて聴くことができるか。さり気なく歌われると、万博の年には5歳だった自分などいやでもどきっとするのですよ。
それにしてもこの物語の結末に置かれた2曲の破壊力はとんでもない。ふと、幻想から我に戻るとそこにいる自分のエゴ、それが「狂女」。ヒト科人間の本質なんて決して真直ぐに投影されないのだ。どこか歪んでる。それがエスカレートして狂気へと.....この曲は去年『フリー・フォークの夜明け』というコンピで初CD化(そっちのヴァージョンは息切れするまで歌われている貴重なもの)される前に、とあるグルーヴ歌謡同志から教えてもらったのであるが、その時からずっと我が心に徒者ではない空気を振りまいていた。J.A.シーザーでなきゃものにできないこの異様な世界を、伊東きよ子はものの見事に演じてみせる。そして、覚醒を告げるエピローグ「いつもと同じ朝」は無邪気なようでいて、実はさらなる錯乱の入口のような狂気を匂わせる。クニ河内のアレンジ・ワークがその色をさらに強調している。この2曲の連なりは、十二単一周後発表された藤真利子の『狂躁曲』のラスト2曲へと、確実に影を落しているのだ。桟敷ワールドは巡り巡る。
ソニーという会社の若き前衛性が、ナベプロの大衆指向と見事に化学反応を起こしたこのアルバムと陰と陽の関係を成すのが、梓みちよの『退職願〜ナツコの結婚』(これも単独CD化が待たれるコンセプト・アルバム!)であり、クニ河内仕事としても連なっているハプニングス・フォーの『アウトサイダーの世界』は男からの返答のようなものであるが、この3作全て、さらに安井かずみの『ZUZU』やサリー&シローのアルバムなどにも関わっていた70年のナベプロはまさに神憑かり的である。芸能プロの王者として君臨しつつも......。そして今はこれらの幻の名盤再発見にもとても協力的。他の某大手プロにこの芸当ができないのが、ほんと残念でならないね。ちなみにこちらの監修はOZの田口氏。好き者はロック画報最新号126ページをしっかりと読め!!!
3. V.A./戦争は知らない〜平和への祈りをこめて〜
(Chronicle TECN-25822 2002年8月21日発表)
2002年夏は熱かった。上のスタンダードやショーボートの他、ユニバーサル傘下に本気なリイシュー・レーベル、ハガクレ・レコードが発足。あのMのアルバムや未発表ライヴ等をリリースして幕開けを飾り、Pヴァインも幻のライヴ『ロックン・ロール・ジャム70』をリイシュー。フォークルの自主制作盤『ハレンチ』のLPサイズ・紙ジャケ入りCDまでアゲント・コンシピオから発売。好き者としてはほんとどれも欲しいって状況ですが、これからも継続することを願うともっともっと大変なんです。
ムッシュかまやつとかクレイジーケンバンドの新譜もいいものを見せてくれたし、ここでもう一枚何を語るかというのも迷ったのであるが、あえてクロニクル8月唯一の新譜として出された(ちなみにテイチク本体からは、80年代ニュー・ウェイヴの幻の名盤群がいっぱい再発。中でもパパイア・パラノイアの2枚組はそそる)このアルバムにします。電信ページでも告知せずほんとすみません。おまけに的確すぎるレビューを先に書かれてしまいました、こちらです。中身がどんなんかっていうのはここを読んで頂いた方がよく解るはず。
で、結論としてはクロニクルの使命はマニアの欲求を親切に満たしてあげることだけではない、ということだ。その辺を勘違いする人々が一部にいてとても残念である。ベトナム戦争の戦火が世界を震撼させていた60年代末期の曲を中心に選曲されたこのコンピは、単なる反戦歌集ではない。今も尚殺伐としたこの世界を悲観せずに済むように、これらのメッセージを形として残しておきたいという願いは、単なる営利第一のレコード会社からもたらされるものでは決してないと思う。フォークル盤に非常に近いアレンジで歌われている高石友也の「イムジン河」(当時お蔵入りにした愚択を、CD化ボーナス・トラックという手段でちゃらにしたビクターは偉い)に始まり、あの「さとうきび畑」をへてタイトル曲で終る構成は、決して音楽をマニアックな道楽に終らせていない人にも優しい。ひりひりしながらもじんときてしまう。あまり知られていないトラックの中では、72年ブラック・レーベル第一弾としてリリースされたアルバム『東京大空襲』に収められていた「さきちゃん」があまりにも衝撃的だ。これも無邪気な歌だと思って聴いているとラストで大火傷。これと「さとうきび畑」の間にワンクッションとして置かれたタイガースの「坊や祈っておくれ」が安堵感(特にサリーの声に顕著)をもたらしてくれる。ちなみにいずみたくの個人レーベル的色彩もあるブラックの第一弾シングルとしてリリースされたのは、あの長戸大幸のプロ・デビュー・バンド、赤と黒だったりする。
最後に置かれたおおたか静流のタイトル曲(編曲者クレジットにびっくり)は、アルバムのテーマを要約すると同時に大切なステートメントでもある。戦争はいやだけど、世の中の不平に対しては立ち上がらずにいられるか。CCCD(ちなみにここではURC音源も聴ける)、偉ぶる古参者、勝手に騒ぐ好き者たち.....まさに机の上(デスクトップ)の戦争。あああ、誰がこのポップな世界を分けてしまったの? なお私はここでは数曲の収録に関して助言を差し上げたのみの貢献となっています。愛まち子の「坊や大きくならないで」も入れたかったんだけどなぁ。かえって下世話になっちゃうからなぁ。