
1. チャド&ジェレミー/オブ・キャベージ・アンド・キングス
(Ultra Vybe/Sundazed CDSOL-7050 67年発表;2002年再発)
ある時期あれだけ文句たれてたVANDAが今年は非常に「いい感じ」である。サンデイズドの新譜に帯と解説つけただけと言っちゃえばおしまいだが、VANDA監修の「サイケ・ポップ・コレクション」が快作揃いで、佐野氏の最近の言動にも個人的賛同を送りたくなる。そしてVANDAの宿敵である某氏がコピーコントロールCDのライナーを執筆したというのが大きいね。ほんとB社のリスト定期購読止めてよかったと思ってる。
何よりも増して「サイケ・ポップ・コレクション」の一枚としてこのアルバムが出たってのは大事件である。今年上半期のベストを決めたあと入手したので、そちらに入れるのは間に合わなかったが、このアルバムはまじで素晴らしい。「サージェント症候群」なんて何さと言わせるほど雄大なパワーを秘めた凄い作品だ。前回のプリンス特集で書き忘れたが、今でこそ名盤として絶大な評価を得ている『ビギン』や『ソング・サイクル』『フォーエヴァー・チェンジズ』などに初めて接したのが、レボリューション時代のプリンスをリアルタイムで聴いてた時期と一致してる。だからこそ素直な耳でそれらの名盤にアクセスできただろうと思うのだが、もしその時期にこのアルバムを聴いていたらなぁとしみじみ思う。当時のポップ・ジャーナリズムからも完全に無視されていたアルバムだったから、まじで。
このチャド&ジェレミーは英国出身ながら、本国より遥かにアメリカで人気が出てしまった故に複雑な評価を得ているデュオである。従来のフォーク・タッチの軽めのポップスから脱却するため、新たなアプローチを求めていた彼等は、プロデューサーとしてゲイリー・アッシャーを指名。両者の革新的センスががっちりと結合して生まれたのが1967年9月リリースの本作というわけである。時期を考えると当然頭をよぎるのは『サージェント』。しかし今作の収録曲の殆どは『サージェント』発表前に完成されていたものであり、その事実だけでも驚嘆ものだ。従来のポップの枠を越えた進歩的楽曲の数々とチャドによるオーケストラ・アレンジは、ゲイリーのポップ・クリエイターとしての試練の手助けとしてまさにうってつけだったのである。後のラヴの『フォーエヴァー・チェンジズ』に連なる内省的なムードとカラフルなサウンドは、サイケの狂乱とは無縁でありつつ内面的サイケ性を忠実に音像化している。そしてB面はその名も「プログレス組曲」と冠された5楽章からなる超大作。姿勢としてプログレを語るなら『海洋地形学の物語』さえも軽く霞む傑作。カラフルに表情を変えながら、ダイアローグやエフェクトがコラージュされていくスリリングな26分間で、一瞬たりとも油断を許さない。データによると唯一『サージェント』発売後の録音となっている、最近のピープル・ライク・アスのようなコラージュ音響派もびっくりの4楽章「Fall」の一部には多少『サージェント』を意識したところも見受けられるが、それも愛嬌といったところ。ちなみにここで使われている戦闘エフェクト、なんと「レボリューション9」にも全く同じものが使用されていてびっくりである。その「9」にせよ、ザルマン・ヤノフスキーの「シュティンクハウゼン」にせよ、源流はこの曲にありなのは間違いないだろう。
ビーチ・ボーイズの仮想敵がビートルズであったとしたら、彼等はきっとサイモン&ガーファンクルを念頭においてこのアルバムを作ったのであろう。(奇しくも同レーベルだったし) しかしセールス的にも評価的にもS&Gを打負かす事は残念ながら出来なかった。この約半年後、S&Gの似たコンセプトを持つ『ブックエンド』がリリースされ大ヒットとなる。その制作に使われたのが特製の16トラック・レコーダー。そう、あのミレニウムの『ビギン』で使われたシステムである。その中心人物カート・ベッチャーとゲイリー・アッシャーが初めて手を組んだサジタリアスのシングル「ホテル・インディスクリート」は、まさにこの『キャベージ』の完成真際に作られていたものだった。ここでのダイアローグ部分を担当している前衛コメディ集団、ファイアサイン・シアターがそのシングルにおいても大々的にフィーチャーされていることを考えると、余計このアルバムの重要性は避けて通れないと思ったりする。
そしてやっぱりゲイリーはビーチ・ボーイズを相当威嚇していたのだろう。だってこのアルバム、『ワイルド・ハニー』と『フレンズ』を足した以上に演奏時間が長いのだから(もち、ボーナス・トラックは勘定に入れずですが)。時間は有意義に使おうとそういうわけね。
2. ジャン&ディーン/テイク・ブライアン・サーフィン
(Liberty TOCP-66038 2002年編集・発売)
| こごとさいどばあ 〜7月中/下旬の巻〜 残しておいてもしょうがない酷い小言もありましたので、不完全版であることをお詫びします。 July14th2002 インターネット。文化情報網としては高級チョコの詰め合わせであり、新鮮なネタでいっぱいの回転寿司である。個人思想解放網としては賞味期限の切れたメロンであり、激安で叩き売りされる鯛の目である。 前者の一部としてルル網を支持して下さっている方々が極僅かながらいらっしゃるのを知っているので、易々とネガティヴな事は言うまいと考えていたのだけど、やはり壊れている自分を隠すことは出来ないのである。だってさ、自分に全責任があると思っている悪事だって、自分だけの力では片付かないんだからね。安心して食えるものだけを選んで食いたくても、気分次第では進んで食中毒に進みたがる、それが人格なんだから。結果として後者の一部へと足を踏み入れねばならなくなってしまう、それが個人サイトの悲しみなのかもしれん。 さて「はっぴいえんどかばあぼっくす」が教えてくれたいいことは色々とあったが、田口さんのアーティスト解説に一切URLが書かれていないというのには胸が熱くなった。圧縮音源が行き来するのも困ったものだが、逆に掴みやすい情報に踊らされて音楽を聞く耳が曖昧になるのはもっと困ったものである。高級チョコをつまみ食いする快感が、より健康的な食生活のために足をもっと使おうという行動力へと転換されなきゃいけないんだよね。 ルル網は今後も食あたりを起こさない程度に素直な音楽観だけを伸び伸びと掲示していこうと思います。例え人格に率直じゃなくとも。この一年の間で幻想へと転じた数々の身勝手に自ら懺悔の意を送ります。 今日のCCCD小言: とりあえずレココレ8月号をチェック。それ以上にコレクター紳士録が凄いけど。
July24th2002
自殺とか離婚とか、人事なんかに構っててもしょうがない、もっとパーソナルな話をしようよ。個人的な金の使い道とか(おっと、それは一番の次にしてはいけない話だな、webで。) |
3. 大場久美子/狂香小夜曲 (セレナーデ)
(Kitty 25MS-0082 85年発表)
クーミンの東芝時代の作品群に関してはもう語り尽くしたという感じだが、歌手引退後しばらく女優に専念していた彼女が80年代中期突如悟りの境地に入り、アダルト路線で写真集やビデオを発売し始めたことについてはあまり好意的に触れられていない。確かに当時のイメージでも過去の人になっていたし、アイドル全盛期においては歌手としてのクーミンの特異性をあえてクローズアップする必要もないと思われたのは仕方ない。しかし、そんな活動の中、ビデオや写真集とタイアップする形ではあるが、密かにシングルとアルバムを一枚ずつリリースして一応「歌手復帰」していたことに関しては、今こそ触れる必要があるのではないかと思う。
シングル「悲しみ貯金箱/明日では遅すぎる」は、話題を呼んだ写真集「Washing My Life」と呼応した形で84年7月25日発売(プリンスの『パープル・レイン』と同じ日だ)。その約一年後、同名のビデオ作品と共に届けられたのがこのアルバム『狂香小夜曲』である。今月、やっとこのアルバムを手にすることになったので、やはりここに登場させねばと考えた。タイトルからして藤真利子の名盤『狂躁曲』を連想させ、ジャケのイメージも同種のものを持っているからいやがうえにも期待が高まる。全編、作詞・なかにし礼、作曲・三木たかしのコンビによる作品で統一されており、プロデュースは従来通り渋谷森久氏(この人ボンド側の人なんだっけ?)
いやはやまだ20代前半だったというのに人生の泥沼を全て経験した如きジャケの視線にぐっときながら歌に耳を傾ける。もうここには「スプリング・サンバ」の爆走状態は当然無い。落ち着いた歌唱スタイル(決して「うまいのよ!」とはまだ言えないけどね)は自分を楽しんでいるようでむしろ痛快だ。なかにし礼の歌詞が、若くして堕落した女性の回想と錯乱をクールに描き、そのリアルさに圧倒される。アイドル時代のクーミン・ファンにあてたメッセージであるなら、あまりにも痛い。しかし内面描写アルバムとしてはこれほどよくできた作品もないのではないか。最終曲「明日ではおそすぎる」は、現在では『お・し・え・て・アイドル』のCDで聴く事ができるが、いかにして彼女が「Washing My Life」を撮るまでに至ったかの心境をあっさり歌い切った佳曲である。歌手クーミン再評価に向けて、このアルバムは無視できないものだと確信した。ただ単独CD化は難しいよね(曲少ないし.....そうか、おまけムービーとしてビデオ版を入れればいいんかな。)
それにしても同時入手の檀まゆみ「小さな日記」(ETP-17137、81年発売)。このシングルのB面「パフ」は、クーミンの「サージェント」、紀比呂子の「アテンション・プリーズ」、最上由紀子の「恋する夏の日」、吉成かおりの「マイム・マイム」、立花理佐の「トゥルー・ブルー」が束になってもかなわない、東芝アイドル・カヴァーもの史上最強の一曲である。まいりました。